book11-2

□11月22日
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「晴矢!晴矢!」

肌寒い風が吹き込んでくる朝方。
朝食の準備をしてると、何やら楽しそうな声で近付いてくる嫁の方を振り返れば
上は長袖の服を着てるまでは良かった…が、下半身がパンツ一枚の状態だ。

この冬に。寒いのに。

上着が厚いから大丈夫とかなんとか言って返すつもりなんだろうが、そう言うわけにもいかない。

「アツヤぁぁ!!下は!?」
「部屋が暖かいから平気かなって?ダメか?」
「駄目だろ!少しは身体の事考えろよ」
「うー…わりぃ…気を付ける」
「本当に気を付けろよな…で、どうしたんだ?」
「あ!これ!!」

自信満々に出してきた広告。
見た感じ普通のショッピングセンターの冬の安売り的なあれだ。
と、その前に。
下半身を露出させたアツヤをそのままにさせる訳にはいかないので、広告はテーブルの上に置いて寝室のクローゼットの中から温かそうなゆったりとしたワンピースを出してそれを着るように施す。勿論、靴下とかも抜かりなく。
冷やして体調を壊されては元も子もないのだから。
それを着替えてるのを横目にさっき渡された広告に目を通す。
ふと、ある店の項目に目が止まる。
多分、見てほしかったのはこれじゃないのか?
アツヤの事だからそうだろうな。

「アツヤーこれか?」
「あ!うん、それそれ〜可愛いからさ、買いに行かね?」
「買いに行くったって…まだ分かった訳じゃねーし」
「じゃ、じゃあ見に行くだけっ!参考くらいにはなるだろ?」
「まぁー、確かに」

こんなにアツヤが騒ぐのには訳があった。
数日前に妊娠が発覚したからだった。
自分としても嬉しいには変わりないのだけれど、安易に準備するのもどうかと思う。
性別もわからないような状態で買って損をするようなことは避けたい。
参考にと言うのであれば、構わないか。

「じゃあ、きちんと温かい格好してから行こうな」
「ん、その前にお腹空いたぁ〜」
「あぁ、そーだった。もう少しで出来るから待ってろよ」
「うん、ふへへ〜晴矢の料理大好きー」

椅子に座りテーブルに顔をつけて、ふにゃりとした表情で此方を見ながら微笑んだ。
それに釣られるようにして自分の口許が緩んだ。

「大好きなのは料理だけか?」
「んーん…晴矢も大好き」

だから、キスして。
何て、唐突に言うものだから一瞬ビックリしたけど、望み通り唇を重ねた。
軽く触れる程度のキスにくすぐったそうに笑った。





「ふふ、早く産まれてこないかな?」
「だな」




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南アツ♀
『幸せな時間』の続きな感じで
最後が中途半端ですが
良い夫婦の日と言うことで!





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