book11


□繋ぎのピアス
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確信じゃないけど。
きっと自分は消えてしまうような気がしたんだ。
それが当たり前なんだけど、元の時間に戻るだけなんだけど。
この胸に広がる不安はなんなんだ…。




雑誌を見つめて、晴矢に後ろから抱きしめられて…なんとなく眠くなってきた瞳。
不意に後ろから聞こえた欠伸の声に振り返ったら晴矢も眠そうな表情だった
からかうように笑えば少しだけ怒りながら抱きしめられた。
それが恥ずかしくてうっせ!と悪態つきながら返してやった。
ただそれだけが、今は凄く幸せだと思う。
でも、不安は完全に消えてはくれない……。

本来、ここに自分は存在してはいけないんだ。
それだけは分かってる。

(士郎が…大丈夫に……それまでは…)

それまでは…このまま続いてくれたらいいのに。
ふと、晴矢を見れば何かを考えるように瞳を伏せていた…

「晴矢ー?どーかしたか?」
「んー…いやーちいせーなぁーって?」
「んなっ!!うるせぇーなー!士郎に言うぞ!!」
「は?おぃ!アイツには言うなよな!!」

なんて…いう訳ないだろ。聞いてもいねぇーよ。
今、士郎は中で寝てるから…。
それに、晴矢が考えてた事なんて、そんな事じゃないだろ?
俺の事なんだろ?
会う機会なんて中々ないけど、その度に少しだけホントに少しだけ…
影の入った表情を見せる。
それが…正直嫌いだ。
不安に思ってるのは分かるけど、でも…そんな表情は見たくない。
そんな表情をさせたくはないんだ。

「……はいはい」

呆れ気味に返事をして、手元の雑誌を避けて違う雑誌へと手を伸ばした。
雑誌を開いて暫くして晴矢の額が背中にあたる感触を感じた。
それと同時に、抱きしめている腕に力が入った気がする…。


なぁ。
そのままずっと離さないでいてくれよ。
なんて…そんな事願ってみた。

















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