book11


□過去と未来
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目の前にあるその本を見ようかどうしようかと悩んで結局…表紙をめくってみた。

その本の表紙に書かれていた文字は『アルバム』とそれだけ…。
だから余計に気になる。
今この部屋にはいないけど、アイツのアルバムって事だから
俺と会う前とかどうだったのかな?とか正直、気になるわけだ。
これは、人として普通だよな?
恋人だったら尚更…とか都合のいい理由をつけて表紙をめくった。

その中に入ってる写真。
写ってるのは勿論、家族。両親に兄貴に…で当人。
ホント小さい頃からの写真が多くて、その写真を見てふっと笑みが零れた。
それからどんどんページをめくっていく。
だんだん人も増えていって友達だよな、一緒に肩を組んでみたり笑ってたり
遊んでたり…そんな写真が増えていく。
少しだけチクリと胸が痛んだのは気のせいだ。
こんな事に…嫉妬してどうする、自分。
そんなことをモヤモヤと考えながらめくって行けば、ふと…白紙が広がった。
何でだ?と一瞬思ったけど、思い出して納得した。
それと同時に、これを見たことに何だか罪悪感が出てきた。
余計にモヤモヤとしてきた。勝手に見た自分が悪いんだけどな…。

(見つかったら…やべぇーかな?)

なんて…見つかったらの展開なんて分からない。
怒られるのは覚悟だな。只、そのあと泣かせたら…
それだけは避けたいと思うのは事実。
部屋に置いてあったのだから平気だろうなんて心の片隅で思ってもみたけど
“平気”で済まされるような事じゃないだろ。
現に事故の影響でアイツは暗いのとか一人でいる事とか大きな音が苦手だ。
特に雷の時なんか見てるこっちが焦る位に取り乱して最後には感情が無いみたいになる
その光景を自分は目の当たりにしてる。
だから、泣かせるのと悲しませるのだけは嫌なんだ。
早くしまった方が良いと判断して戻そうとした瞬間に部屋の扉が開いた。

「晴矢ー?………何やってんだ?」

背後でアツヤの声が響いた。
吃驚して思わず仕舞おうとした、そのアルバムが手から落ちて床に広がった…。
しかも、アツヤに見えるような角度で…恐る恐る振り返って見れば
少しだけ歪んだ表情。困ったような怒ってるような…どっちにしろいい表情じゃないのは確かだ。
その表情から、その口から紡ぐ言葉が少し怖くなった。
が…
零れた言葉は予想外に柔らかな口調で紡がれた。

「何、勝手に見てんだよ…」

少しだけ照れるように笑いながら。
手に持っていたジュースの乗ったボードを机の上において
床に落ちたアルバムを拾ってページをめくり始めた。
めくるたびに何時もより柔らかい表情をして目を通して、白紙のページで手が止まった。
その光景を見て何か言おうとしたけど、今…自分が何を言っていいかわからない。
何を言ったらどうなるかも分からない。
そんな俺を見たんだろうな。気が付けば目の前にアツヤが居て額に軽く口づけをした。
意味の分からないその行動に一瞬固まったと同時に顔が熱くなった
普段、そんな事しないくせに何するんだ!

「お前が気にする事じゃねぇーよ」
「は…?あー…いやっ…そーいう訳じゃ…無くもないな…」
「だろ?……只さ、この先のページ埋めるもんが無いんだけどな」

少し伏せたように手に持っていたアルバムに目を移した。
無いんじゃなくて…出来ないんだろうな。とは思ったけど、そんな事…口になんか出さない。
平気そうなこと言っといてそんなに平気ってわけでもなさそうな表情に
やっぱり罪悪感が心の中を掠めていった。
だから、自分の携帯を出してカメラモードにして強引にアツヤを引き寄せた。
勿論、罵声は飛んできたけどな…
その罵声を塞ぐようにキスをして同時に撮影音が鳴った。
上手く撮れたかなんてそんな保障何処にもないけれど。携帯の中を見ればそれなりに良く撮れてた…。
それを暴れているアツヤに見せれば一気に顔が赤くなった。
さっきの仕返しだとか言っとく。けどホントはそうじゃないんだけどな。
近くにあったアルバムを取って携帯画面と白紙のページを広げて見せて


「ここに…此れ貼っておけば良いだろ?…現像して」
「は、はぁぁぁぁ!!??ふっざけんな!なんでそんな恥ずかしいもんっ!!」
「無いんだったら良いだろ?な?」

そう言えばうっと詰まって俯いたまま顔を上げようとしない。
覗き込めば真っ赤な顔と一緒に小さな声で仕方ねぇーな…と、途切れ途切れだけど呟いた。
それが嬉しくて耳元で一言いえば更に真っ赤になって睨むようにバカと言われた。
今の表情でそれは反則だと思いながら抱きついて
腕の中に真っ赤になった恋人を笑いながら収めた。







『此処から先は俺たちで埋めような』









どうかこれから先
ずっとこいつと居られますように…。






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アトラス』様に
参加させて頂きました。
南アツです。
書き終わって誰これ!?状態な晴矢…。
無駄に長くなった気がします。スイマセン;;
過去と未来と言うことですが、御題にあってるか心配になってきた。

素敵な企画に参加させて頂き有難う御座いました。









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