book11


□小さな恋物語
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※南雲引き抜き設定。
アツヤ生存してます。




俺がイナズマジャパンに引き抜かれてから数週間が経った。変わったことと言えば、吹雪の弟のアツヤと恋仲にあるということ。俺達二人は常に一緒で、練習に精を出し競い合っている。
そんな俺にはある悩みがあった。それは、アツヤと恋仲にあるにも関わらず、何の進展もないこと。一緒にいる時間は練習ばかりで、甘い時間を過ごしたことなど一度もなかった。


「で、なんで僕なの?」

「いいじゃねえかよ。ちょっと聞いてけって」

「えー…僕じゃなくてヒロトくんの方がいいんじゃない?顔見知りなんだし」

「ヒロトはダメだ。ろくな返事が返ってこない」


とりあえず、兄の吹雪に相談してみることにした。不本意ながら吹雪はモテるので、何かいいアドバイスをくれると俺は確信した。だがこのブラコン、自分の弟が俺に汚されるのを黙って見過ごすことができるのだろうか。


「で、何?アツヤのこと?」

「まぁな」

「まさかエッチなことするつもりじゃないよね?」

「はあ?エッチどころかキスもまだだし、手も繋いでねーよ」

「へぇ、驚いたな。性欲の塊のような君が、まだアツヤに手を出してないなんて」

「誰が性欲の塊だ」


吹雪の言葉がグサグサと刺さるが、今は気にしている場合ではない。俺はアツヤとの進展を望んでいる。ここは温厚に。
吹雪はくすり、と微笑んで続けた。


「別にさ、何してもいいんじゃない?」

「なっ、ンなの無理だ無理っ!」

「どうして?アツヤの事、好きじゃないの?」

「ゔー…好きだからできねえっつうか」

「君も案外ウブだね。そういうのは思い切ってやればいいんだよ。アツヤだって待ってるわけだしね」


吹雪は小首を傾げて言った。アツヤとは違う可愛さだが、こいつの腹黒さは俺が一番よく知ってる。吹雪は俺の腕を掴んで、立ち上がらせた。小さく「頑張って」と背中を押してくれた吹雪。俺は初めてこいつの優しさを目の当たりにした気がする。


「アツヤなら今部屋にいるから、行ってきなよ」

「ああ、悪ぃな。行ってくる!」

「…全く、二人とも世話が焼けるんだから」

アツヤの部屋にたどり着き、ドアを二回ノックする。しばらくして、「んー」という声が聞こえたので、遠慮なく部屋に足を踏み入れた。アツヤは練習の汗を落としたのか風呂上がりの格好でいた。まだ生乾きの髪が、しっとりとしている。


「ん、南雲か。何か用?」

「ああ、かなり重大な用事だ!」


俺がいつになく緊張した面持ちで言うものだから、アツヤの顔も自然と緊張した表情に変わる。アツヤはゴクリと唾を呑むと、「で、何だよ」と続けた。
俺は覚悟を決めて、アツヤの頬に手を添える。


「な、なぐ…」


お互いの唇が近づき、あと数センチで触れ合ってしまいそうな距離。アツヤも何をされるのか感じ取ったのか、目を瞑ってじっとしていた。頬を紅潮させ、唇をちょこんと少し突き出すアツヤ。首に掛けていたタオルがぱさり、と音を立てて落ちる。
その時だった。


「アツヤーご飯だよー」


ガチャリとドアを開けて顔を出したのは吹雪だった。俺とアツヤは勢いよく飛び退き、二人して顔を赤くする。そんな俺を見て吹雪はどす黒く微笑んだ。


「やっぱり悔しいから来ちゃった」


やはり、吹雪は腹黒い天使だった。初めから邪魔する気でいたのだ。とことんブラコンなやつだ。吹雪は早く来てね、と言い残し部屋を出て行く。俺はがっくりとうなだれて、アツヤに「行くか」と尋ねた。
アツヤはこくりと小さく頷いて、その場に立ち上がる。癖毛をボリボリと掻いて、俺の腕をグイッと引いた。


「おい…っ?!」


唇に柔らかいものが触れる。それがアツヤの唇だと分かるのにそう時間は掛からなかった。何度も角度を変えて、啄むような口付けをする。アツヤに握られている腕が、どうしようもなく熱い。
最後にぐっと唇を押し付けられて、アツヤの唇は離れていった。


「がっかりした顔してんじゃねーよっばか!」


アツヤはそう言い残し、部屋を逃げるように出ていく。俺はしばらく放心状態のままで、我に返るとアツヤを一目散に追いかけた。


「おいアツヤってば!」


廊下で捕まえたアツヤに、今度はこちらから強引にキスをしてやる。アツヤは赤らんだ顔で、「やっとしてくれたな」と笑った。俺はそんなアツヤをだらしない顔で抱き締める。
そんな光景を全て吹雪とヒロトに見られていたのは、後で知った事実である。



おわり。





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優木様より19000hitで頂きましたvv
見事に理想過ぎてによによしますvv
真面目に見た瞬間に叫びそうになりました〜
ほんと幸せvv
そして、ありがとうございました〜!!

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