book11


□if
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〜if〜






     『もしも』

なんて言葉を何度、頭の中で繰り返しただろうか…。
繰り返しても考えても変わらないの位、自分だってわかってるんだ。
でも、もしかしたらあるかもしれない世界に自分が居たなら
今とは  違うものがあるんじゃないか?
そしたら、士郎を苦しめることも無いかもしれない。
あいつに対してこんな想いを抱かなくても良いかもしれない…。
そう、思う。
別に今の状況が嫌なわけでも不幸せな訳でも無い。
こうして、好きな奴の傍に居て抱きしめられているだけで
幸せなのに…。
けど…

 
『もしも』

違う道を辿っていたら?

こんな関係にならなかったら?
寧ろ、逢わなかったら?
士郎が俺を必要としていなかったら?
あの事故が無かったら?
俺が…この世に元々存在してなかったら?


そこまで考えて振り払うように首を振った。
何、考えてんだ…?

ホント、何か変わるなんて思わない。
変わったら何がどう変わる?
この先から逃げたって何もならないんだ。
今、包み込んでる腕を温かさを失うことが何よりも怖い。
この状態がいつまで続くかなんて分からないけど…
俺の存在はきっと儚いもんなんだと思う。
本来…俺がここにいる自体おかしいのにな。

ふと、見上げた先に少しだけ不安そうな金色の瞳が見えた。
さっきまで人を馬鹿にしたかのように見ていたのに
いつもそんな表情見せないから…
なんて顔してんだよ…なんて思った。
今度はきっと自分が馬鹿にしたような表情してると思う。
それに気付いたであろう瞳が揺れた。
少しだけ安心したような表情で額を合わせて目を閉じて…唇が動く。
「どうかしたのか?」
「ん、別に……なぁ?晴矢…」
頬に触れる髪に触りながらなぞりながら…目を閉じたまま口を開いた。
さっき考えてた事を…聞いてみようと思った…けど、
思った瞬間に不安が押し寄せてきたから
それを誤魔化す為に髪から指を離して
晴矢の頬に手を滑り込ませて引き 寄せるようにして
首に手を回した。
正直…この態勢…辛いな。とか思ったけど.…
そんなの無視して額を離して唇を重ねた。
重ねながら…自分の身体じゃないと気付いて拙いと思ったけど…

止められない…か。



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