book11


□守れない約束なんかしないでよ
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なぁ…。

お前は…
こうなることを知ってた?

なんで…あんな表情を見せた?
なんで…あんな事言った?

俺と…
逢ったとき
話してるとき
離れるとき

一体、何を思ってた?








目の前にあるモニターをただただ漠然と見ているだけだった。
周りではモニターに映る試合を見て声をあげているものが何人か。
まぁ確かに…グラン率いるジェネシスの実力は自分としても認めている部分はあるものの…
今、自分が見つめている先に映るのは…
試合に出てはいない人物−吹雪士郎−を。
未だにベンチに座っている奴を少し映るたびに気にしながら見ていた。
確かイプシロン改と戦った後だったか?
それ以来ずっとベンチに居る気がする…。
勿論、カオスとして戦ったときも…ベンチに居た。
だから…今日の、この試合も…今の所…
ただ試合を見つめ居るだけだった…
前に逢った人物としては思えないほどの表情をして。


(………なんだよ…)


気に喰わない。ムカつく。
さっきから…そんな感情ばかり渦巻いてる。
何があったかなんて知らない。
けれど…何だかムカついて仕方ない。
きっと自分一人だけ怪訝そうな表情をしているんだろうな…
何しろ、見たいのは試合の方よりもソイツだから…。
正直に言えば吹雪士郎よりも“アツヤ”の方だから。
吹雪がどうして今の状態になったかだなんて知らない。
けれど、その表情を見てアツヤはどうしているのか…それだけが気掛かりで仕方ない…吹雪士郎の中にアツヤは存在しているから…だから、同じだとしたら…?
そう思うと…余計ムカついた。



この試合が始まる数週間前に俺はアツヤに逢った。
寧ろ待ち合わせをして言った方が正しいか?
一度逢ってから何度も何度も逢うことが多くなった。只それは偶然とかじゃなくて必然的に…逢いたいから会って何が悪い。
でも、自分達は敵対しているのだと心の隅に置きながら…。
それでも何処かしら惹かれていたんだ。


そんな思いを巡らせていると、いつの間にかベンチに居た吹雪がグランドへと入る。
完全に不安が消えてないような表情がしたが……。
それでも本人が望んだことだろうな。
ただ、アイツがグラウンドに入った瞬間…
嫌な感じがした…
別にアイツがどうこうって話じゃなく…ただ嫌な感じが駆け巡った。





案の定…それは起こった。




吹雪の首から離れていくマフラー。

その時
俺はどんな表情をしていた…?


「っーー!!!」


勢いよく立ち上がった瞬間にガタンと部屋中に音が響き渡った。
その音に部屋に居た全員が自分に視線を注いだと思う。
横に座っていたヒートが小さく“バーン様?”と呟いた声が遠くに聞こえた気がした…。

なぁ?これは夢か?

そのまま、見たくなくて部屋を後にした。
扉近くに立っていたガゼルの冷めた瞳を無視して…。




壁に背中を押し付けて、ずるりと床に座り込んだで顔を覆った。
あの日…
言った約束と言葉が脳裏を掠めた。


『今度、逢った時……な』


そう言った表情は照れているのと一緒に
少し寂しそうで…
どうして?と聞こうとして伸ばした腕は掴むことは出来なくて。
結局…こんな結末だ。



「ぁー………もぅ…………」








『守れない約束なんかしないでよ』















「なぁー……なんでさせてくんねーの?」

「んなの、兄貴のだからだ!!!」
「はぁー……一回ぐらいいいだろ別に…」

「だ、ダメに決まってんだろ!」

「ひでー……アツヤはしたくねーの?」
「っー!!…俺はっ!」
「うわぁ。顔真っ赤…なぁ…いいだろ?」


「だっ……こ、今度、逢った時……な」


「…………おぅ」






なぁ?
今度っていつだよ?


俺ら敵対してるのに…なぁ?
なんで…あの時キスしなかったんだろうってな。
今度なんて…もぅ無いじゃねーか。


床にぽたりと雫が落ちた瞬間に



ごめんな
ありがと



って聞こえた気がした。








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wherefore art thou...?』様に参加させていただきました。
敵対…と言うことで南(バン)アツ!!
軽い設定としては、内緒で付き合ってる。
敵対は承知の上です。
アツヤは身体が士郎なので、したいけど
させません!って感じです。



参加させていただきありがとうございました!





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