book11


□この空気と空間
1ページ/1ページ


どうしてこうも好きで…惹かれるのか…

その答えは………多分、一生出てこない。
そう、微かながら思う。


廊下を歩いて敷地内の中央にある庭園へと
足を運ぶ。
時折…気分を落ち着かせたり
息抜きをしに此処に来る事が多い。
その度に誰かしら付いていきます!
等と言われるが…正直な所…一人で休みたいのだ。
そんな事を考えながら気が付けば着いていて
相変わらず良い風が庭園の中を舞っている。

その中心に大きく聳える大樹。
木々が生い茂るその下で風を感じながら
休むのが心地よくて好きだ。
だが…何となく…今日は違うものを感じて
良く良く目を懲らせば大樹の下で気持ち良さそうに眠るその人物。

(…今日は…あの馬鹿とは一緒ではないのか……)

薄く黄色掛かった髪に小さく頬には傷があって…。
確か…幼なじみ…と言っていた気がするな。
なんて思えば、ちくりと胸が痛んだ気がした。
正直な所、この気持ちを認めるのは…
何と言うか、自分が許さないと…
そう感じてしまう。
それでも、そんなプライドは…この感情の前には
プライドと呼ぶほどのものではなく
只、意地を張っているのと対して変わらない。


隣に座って。
何をするでなく…風を感じながら空を仰いだ。
時々…横を見ながら…

その瞼が開いて瞳を見せて

名を呼ばないか?……と

こんな感情を持つのは別に構わなくて

でも…こんな風になる自分が嫌で

彼の事は好きで…

訳が分からなくなる。

それでも…何故か…



彼の隣は心地よくて
安心する気がして好きだ。

だから


この空気が、空間が…


ずっと続けば良いのに。






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ