book11


□いただきます
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綱立の『愛の逃避行みたいで愉快』(企画提出)
と、リンクしてます。








目を覚まして最初に見えたのは天井…。
カーテンから光が差し込んで部屋を照らしている。
隣のベッドには誰もいなくてきちんと畳まれていて
未だ眠い体を起こして近くにあった眼鏡を付けてベッドから出ると扉の向こうからトントンと音が聞こえて微かながらテレビの音も…
相変わらず起きるのが早いな…なんて思いながら扉を開いて目的の人物を見つけた。

「あ、起きたか?おはよ」
「ん、おはよう…」

挨拶をして椅子に座るわけでもなくただゆったりと歩きながら彼の後ろへ回ると腰に手をまわして抱きついて額を彼の肩へとのせると
嫌だと言った反応はなく、小さく、くすりと空気が揺れて頭の上に手が置かれて子供をあやすかのように優しく撫でるも顔は少し困った表情だ

「楽也…とりあえず、包丁使ってるから…な」

あぁ…。そういう事か…。
と、離そうとするよりも先に雄一郎が包丁を置いたから大丈夫だろうと思い抱きついたままで…。
それにしても、今日はまだ起きてこないのか…二人の姿が見えないな。
テーブルに並べられたものも二人分で。

「今日…だった…?」
「あぁ、今日だよ…二人とも隠してるつもりだったみたいだけど」
「ばればれ…だったね。で、何処に行ったの?」

此処最近…そわそわしていると言うか…
何かぎこちない雰囲気を醸し出していたのは明確で…
主に立向居君がだけど…。
彼は隠し事が出来ない性分なのか…あからさまに表情に出る。
それに…昨日、雄一郎が寝るのが遅かったから何かあるのは分かっていたけれど…

(今日だったのか)


「んとな…場所って訳じゃないけど…そこの皿の所に書いてあるから」
「皿……ってこれかい?」

抱きついていた腕を離してテーブルの上にあるラップの掛かった皿の横に一枚の紙。
その紙には雄一郎が書いたであろう文字と
『海へ行ってきます! 綱海・立向居』
の文字。
それに納得していると雄一郎が指でカレンダーを指して苦笑しているので何かあったかとカレンダーを見れば今日の日付には赤…ピンクのマーカーで書かれたハートマーク。

「……雄??これは……」
「それ…多分綱海さんが書いたみたいで………記念日だってさ。一緒に暮らし始めて…だったかな?」
「それなら…ハートじゃなくても…何考えてるんだ、あの馬鹿は」
「まぁ、分かりやすいから良いじゃないか」

それはそうか…。
よく、付き合い始めた記念とか良く聞くけど、それよりは…こっちの方がいいんだろうな。
別に忘れたわけでも無いけれど…カレンダーに記すよりは自分で見て確認でも無いけれど、そういった感じの方が良いだろう。
と思いながらぺらぺらとカレンダーを回せば…
赤い小さなハートを見つけた。
その隣には小さく綱海と立向居の文字…
きっとこれが付き合い始めて…と言うことだろうな。
カレンダーを元に戻して今日のハートマークを見つめて…
だから今日だったのか…と自分の中で納得していると
朝食の準備が終わったであろう雄一郎が
隣に来て覗き込む様な感じで見てくる。

「…で…今日明日は二人っきりなんだ」
「そういうことになるね…」
「とりあえず…ご飯食べ終わったら出掛けようと思うんだが……一緒に行くか?」
「勿論…付き合うよ」

そう言えば、良い笑顔が返って来て、じゃあー早くしようなーとそのまま食卓へと足を運び向かい合わせに座って




いただきます。








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