book11


□貴方と同じ
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渡されたその紙は一枚ではなく二枚で。
渡した相手は苦笑にも近い笑顔で
“僕には必要ないからどうだい?”と
その、苦笑した表情はきっとあの人が、それを断ったからであって
きっとこの方は無理意地をしたくないから…。
でも…そうなったらこの紙は必要なくなってしまって
勿体無いと思ったのだろう。
否、普通にそう考えるかもしれない。

「そんな、きっと彼も行きたいと思いますよ」

そう言って返したものの良いんだよって笑顔で押し返されてしまった。
だから、誰かと行っておいで。と
そんな笑顔で渡されてしまったら…返すことも出来なくなって
自分の手の中に納まった。

そして…今現在。



その紙をどうしようかと悩んでいた。
アイシーやクララとか誘おうと思ったものの…
二人とも用事で行けないと残念そうな表情をして。
誰かほかに居ないかしら?なんて…思ってフラフラと部屋に向かった。
その途中…見慣れた服が背中が見えて思わず走り出した。


「ネッパー!」
「ん?っ…な、なんだよ」

駆け寄って自然に彼の服の端を掴んでいた。
それに驚いたのかな?振り返った彼は何となく照れている感じで
いつもの様に素っ気無い態度。
そんな事されたら自分まで恥かしくなっちゃうじゃない。

「あ、あのね……これ、良かったら一緒に行か…ない?」

差し出した紙―チケット―を見て彼の表情が一瞬にして変わって
怪訝そうな表情をした。
駄目かな?と続ければ小さく唸ってそっぽを向いて
ボソッと何かを言った気がした。
なに?と聞き返せば今度は怒ったような表情で

「行けばいいんだろ。…別にっ暇で!だからな!」
「…うん。分かってる…ありがと…」


怒りながらも腕を引いて廊下を歩く。
後ろから見える顔は少し紅くなっていて…
きっと自分も熱いから同じような表情をしてると思うけど…


これから、一緒に行くのが楽しみで仕方なくなった。




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(…お前、ガゼル様と行くんじゃなかったのかよ…)

(ぇ?…違う、けど…見てたの?)

(ばっ!!そんなわけ無いだろっ…!)

(???)

(バーン様に同じ物貰ったとか…言えない…)






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