book11


□それはまるで
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ふわりふわりと雪が舞い降りていた。
少しずつ春へと近づいているこんな日に。
上を見上げればより一掃そのふんわりとした姿が見える。
この場所にいるのは少し寒いけど…。
それは雪のせいなのは重々承知。

此処に呼び出されたのが数時間前。
とりあえず…気は乗らなかったが
呼び出しに応じたけどっ
呼び出した本人は一向に現れることはなく…
いつまで待たせるんだと電話でもしようかと携帯を手に持ち
ボタンを押そうとした瞬間に背中をいきなり誰かに押された
気がして振り返ろうとした瞬間強い勢いでそれを拒まれた。

「っーーー…アツヤ?」
「絶対振り向くんじゃねーぞ!」
「え、ぁ…おぅ」

とりあえずいう事聞いてた方がいい気がしたので向きを戻すと
抱き着くような感じで腰に手が回ったと思いきや
手元には綺麗にラッピングされた袋が…一つ。
丁寧に手の上に乗せられて。
それを見ながら何かあったかなんてきっと愚問だ。
此処最近…街中こんなに特集的に取り扱っているのだから
分からないことはないだろう…きっと。
それに、渡された中身を見ればやっぱりチョコレート。
それが少しいびつな形をしているのがあるから

きっと手作りなんだろう…

と思った瞬間テンションが上がった。

「アツヤ…これっ!」
「だから!!!振り向くんじゃねーよ!!!」
「いでっ」

また…拒まれた。
今すぐにでも抱きしめたいくらいなんだけどな…
それを本人が許さないから仕方ないか…。
それから抱きつく様にしていた腕が離れて
今度は背中に添えられるように置かれた気がした。
普段こんな事しねーし、こんなに素直なのあまり無いから
正直な所…
どうして良いか分からない。
分かったとしても………

(俺の心臓がもたない…)

いつもと調子違うのも素直なのも、こんなに触れてくるのも全部。

「あのな…晴矢…それ味とか保証しねーからな…
兄貴が作ってたの真似てみただけ…みたいな物だから…
変な期待すんじゃねーぞ…」
「……んーでも、味とかよりもアツヤが俺の為に
作ってくれたことが目茶苦茶うれしーんだよなぁー!」

「っ……こんの…馬鹿っ!」

多分きっと照れ隠し。
背中を思いっきり叩かれた瞬間に
少し噎せたときにホント少し表情が見えた。





それはまるで
林檎か苺くらいの紅い顔で




いつも以上に愛しく見えた。







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