book11


□協奏曲
1ページ/1ページ


薄暗い部屋の中でゆったりと空気が流れる。

伸ばした指は肌の上を伝って徐々に下へと…。
外は、しとしとと雨音を響かせて

「ぁ…っ」

唇から零れた声は宙に消えていく。
その声が、より一層、色を引き立てて
留まる事も知らないで自分の中の欲が此れでもかと言うほど
溢れてくる。

「んぅっ…ゃ…」

零れる声を塞いで、指は動かしたままで
撫でるように指を伝わせて、腿の裏側を
遊ぶかのように意地悪をするように弄りその度に
小刻みに体が反応を示す。
それが、異様に可愛らしく、もっとその声を聞きたくなる。

唇を離して、自然に出てきたであろう涙を舐めながら拭えば
驚いたように目を見開いて軽く微笑み
背にまわした腕を離して、髪を掻き揚げられて額に唇を当て
キスをされた。
その後にまた、微笑み、それはまるでお返しだとでも
言うかのような表情で。

「…雄一郎」

それに、触発されたのに変わりはないだろう。
耳元で名前を呼んで、ぐっと押し込むように力を入れた。
それと同時に小さく声が聞こえて、徐々に喘ぎへと変わっていく。
それでも、目を見ることも少し笑うことも辞めないで
お互いを見たまま貪ると言った表現が正しいように
ただただ、お互いを求め合うだけだった。




二人の間にはお互いの温度と例えようの無い位の想い




外には優しく響く雨音。





それはまるで
反するものの



協奏曲。






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ