book11


□愛しいキミ
1ページ/1ページ



今は世間一般的に言う

…冬…。


そこら辺に暖かそうな恰好をして歩いているカップルや親子が沢山いる。
中には一人なんていう人もいたけれど。
そんななか俺達は買い出しという名の元に市街を歩く。
隣にはリストを片手に買ったか等と確認している可愛い恋人。
出来ればこのまま何処かヘ行きたいくらい。
しかし。そんなことが許される筈もなく、段々とリストの項目は少なくなっていき
戻らなければならない状況になる…
もう少し遅くてもいいだろ?なんて言えばすぐに怒るのは目に見えている。
だから…自分で思うのも変だろうだけど…
俺にしては珍しく静かな訳だ。

「あ。これで最後みたいですね」
「お。終わったのか??」
「はい。じゃあ…皆待ってるんで行きましょう」

そう。軽く笑んで今来た道を引き返す。
本当は戻りたくないんだけどなぁー。
仕方ないかといい聞かせ頭をガシガシとかいて…
先に行った彼を追い荷物の持っていない方を掬い上げて手を繋いだ。
突然の事でびっくりしたのか一瞬目をぱちくりと瞬きをすると気付いて来たのか?
段々とその顔が赤く染まっていく。

「つ、綱海さんっ!!」
「まぁまぁ…そう怒るなって……って言っても可愛いからそんな気しねぇーな」

その言葉に更に紅くなるのがわかる。
あぁ本当に可愛くて仕方がない。
暫くすると降参したのか大人しく指を握り返す。
それがどうにも愛おしくて顔のにやけが止まらない。
きっと隣では鋭い目で睨み付けて苦笑でもしているのだろう。
クスっと声が聞こえた気がした。
少し目をやればやっぱり笑ったらしく、良い笑顔がそこにはあった。
それにつられて軽く微笑み少し体を屈ませると
驚いた表情がそこにはあって二人して足を止めた。

「ぇ…、な…んですか、?」
「勇気…黙ってて」




触れるだけのキス。
人通りが少ないから平気だろう…

多分。


「さーってと。早く帰るか〜」

何もなかったように手を繋いだまま先を急ぐ。
後ろから狡いです。なんて聞こえたけれど
聞こえないふりをしてただ笑って返しただけだった。




あぁ。
本当に可愛くて愛しくて仕方がない。







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ