book11


□微笑み返す表情が好き
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夕日の中を只、歩いてた。
目の前を歩くアツヤは心なしか楽しそうな足取りで。
その理由を俺が知るわけもなくて只、後ろから眺めているだけだった。


(アイツの事…とか………)


アイツとは彼の兄の事。
この兄弟は異様に仲が良くて、時には兄を優先させることが多い。

正直な所。

良く思ってる訳無いだろう?
確かに“兄”は家族なのだから大切なのも分からなくもない。


が。


少し独占欲の強い自分からしてみれば
この兄弟の仲の良さが気に食わない。
ついでにその“兄”は俺の事が
これでもかと言うくらい毛嫌いしている。
アツヤと一緒にいれば極寒の笑みを浮かべ
抱き付こうものなら氷漬けにされる。


(アイツ…絶対殺す気だっ)


その度に何回寿命が縮んだ事か。
アツヤは不審に思い聞いてみるも
見事にあの兄にはぐらかされるというわけだ…。
今この状況を見ただけでも冷たい笑みを浮かべて
心にも無いことを言うのが想像できる。


「や…、……晴矢?」


気が付けば心配そうに覗き込んでくるアツヤの顔が目の前にあった。
あ。ちょっと、この角度良いかもなんて思いつつ
口になんか出さない出したら殴られるのは目に見えているから…
それにしても…綺麗な黄色してるな…。
自分も同じような色だけど其れとはまた違う綺麗な色で

「どうかしたか?」
「それはこっちの台詞だ。さっきから話し掛けても上の空だろ!」
「ぁ?マジで……?」

思いっきり頷きさっきとは打って変わって
不機嫌な表情を覗かせる。
と、言っても仕方ねぇーな…で済ませて少し笑みを零した
で、どうしたんだ?と聞けば
服の袖を引っ張ってそのまま先に進んでいく。
答えもないままたどり着いた先はコンビニ。
何で?と首を傾げた俺を余所に店内へと入っていく…
店員の声が響く中、先に入って行ったアツヤは他の棚を見向きもせず
アイスコーナーへと一直線。


(え……今、冬………だよな?)


この寒い中アイスを買うのかと思うと…
少し所ではなく、かなり…寒気がする。
にも関わらず…アツヤは買う気満々な様で
只今品定め中。


「晴矢!何がいい?好きなの選べよ」
「俺はいらねー…寒くないのかよ」
「なんで?本当にいらねぇーの?」

いらねーと返事を返して本棚へと目を向けて
並べられた本を一冊取り出して立ち読みを始める。


しばらくして、ありがとうございました。
と通りの良い声が聞こえてふと、レジを見れば
買い終わったのであろうアツヤが袋を提げてこっちに向かってくる。
袋の中は、いびつな形をしていて
一個所ではないアイスが在ることが確認できた。


「……んなに食うのか?腹壊すぞ?」
「ちげーよ。俺は一つ。早く行こうぜ」


急かすように手を掴まれて店を後にした。
直ぐにぷぃっと顔を逸らして
まるで照れてるかのように急かす。
それに苦笑を浮かべた。

「アツヤ。ほかのは誰のなんだよ?」

からかうように、笑いながら聞いてみれば。
大体予想した人物の名前が返って来た。
あぁ。そうだな…なんて再確認。
でも。袋の中を覗いてみれば、おかしな事にアイスは三つ。

つまり…三人分。

アツヤに兄に…それだけしか必要は無いはずなのに。

残った一つは一体誰の?


「一個多くないか?二つで良いんじゃね?」

「それ。豪炎寺の」

「はぁ!!?何だよそれっ!俺のは!」
「いらねーって言ったじゃねーかよ……だから、こっち…な」

そう言って袋から出したのは
カップの中に綺麗に飾られているチーズケーキ。

「アイスいらねーって言ったから……
此れくらいはって…別にいらねーんだったら良いけど!」


照れながら突き飛ばすよう口調で聞いてく
る。
表情が可愛いな、なんて口許が緩みそうになって思わず
抱きしめたくなった衝動を押し込んで
ふわふわした頭をがしがしと撫でると
さっきまでの怒っているような照れ照るような表情が和らいで微笑んだ。


「ありがとな!」
「おぅ」






(で?何で豪炎寺なんだよ?)
(さっき電話したら兄貴と一緒に居たみたいだから…)

(………食べたいって?)
(ん。兄貴が買ってきてって)



(......そっか)






−−−−−−−−−
×アツヤ企画に参加させていただきました。
二人の雰囲気を未だに把握できてないのですが!
タイトルとあってるか心配です!
あ。でも書いてて楽しかったです。
ありがとうございました!



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