book11-2

□幸せな時間
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ふと、目が覚めた。

上を見ればカーテンの境目から微かに射し込んでくる光。
朝か…。
なんて思いながら視界を自分より下に移し
腕の中で規則的な寝息をたてて未だに
夢のなかにいる彼女に視線を向けた。
その寝顔だけで幸せだと実感する。

数日前。自分達は式を挙げた。
こぎつけるまで結構…いや、かなり苦労した。
彼女の姉が半端なく怖い。

初めて逢ったのは同僚達と飲みに行ったときだったな
半強制的と言うか…面白半分に酒を飲ませられダウンした同僚を家が近いからと言う理由で
家まで送って行ったときだった。
その時に出迎えたのが、そいつの嫁と彼女だ。

正直…一目惚れだった。

それがきっかけで仲良くなって、会う回数が増えて、付き合うまでいったものの
姉妹共にシスコンだったから何をするにもお互いが一番。
ついでに付き合い始めたって聞いた途端、彼女の姉が豹変し
『触らないで!近寄らないで!』
『泣かせたら許さないから!』
『そんなに私の事、怒らせたいの?』
等々…。
だから、結婚させてくれなんて言うときには決死の覚悟だったけど、なんとか同僚が納めてくれたみたいで本当に助かった。
まぁ…幸せにしなかったら覚悟しときなさいよ!
なんて言ってた気がする。


「んぅ……晴矢…」

小さく声が零れた。
自分が起きたせいか桃色の頭がモゾモゾと布団の中で動いてから視線をこっちに向けた。

「アツヤ、起きちまったか?…まだ早ぇーからもう少し寝てろよ」
「晴矢はー?」
「俺は先に飯作っとくから…そしたらまた来るな」
「んっ」

そう言って髪を撫でながらふっくらした唇に口付けをしてから起き上がりベッドから降りて服を一枚羽織ながらキッチンの方へと向かった。
向かって早々カーテンを開けて光を部屋全体に入れる。
それと一緒に窓を少しだけ開けるも、冬のためか冷たい風が吹き込むだけだったから
長くは開けてられない。
空気の入れ換えが出来る程度で数分したら窓を閉めた。
それから冷蔵庫を開けて、卵を二つとパンを二枚。
熱したフライパンに油を敷いて卵を落として
程好く焼いたら水をいれて蓋を閉めて弱火にして適度に火を消して蒸す。
その間にパンをオーブンに入れて焼いて
マーガリンを塗って冷蔵庫からジャムの瓶を出してテーブルに置きフライパンの中で待機してる目玉焼きを二つ皿に盛り付けた。

「今日はこれで良いか…」

これで戻って呼びにいくかなんて思ってたらキッチンの扉が開いてアツヤが姿を覗かせた。
目を擦りながらパジャマのままで。
何度か欠伸をして、うつらうつらとしながらいつもの定位置に座ったから慌てて
部屋を暖め始めた。

「まだ寝ててもいーって言ったろ?」
「だって…今日、買い物行くし」
「早く行くって?」
「ん、早く済ませて、晴矢とのんびりしたいもん」

だって明日会社でしょ?と続けるアツヤを余所に絶対、自分にやけてる気がする!
それに気付いたんだかアツヤも真っ赤に染まって恥ずかしそうに、でも嬉しそうに俺の方を見て笑うからこっちまで嬉しくなって自然に笑みが零れた。

「じゃ、早く済ませるか!」
「ん、そしたらいっぱい、のんびりしような」
「分かった」

じゃあ、頂きます。
手を合わせて言って食事を始めた。
少しだけ暖まった部屋で今日の予定や
何を買うやら色々と話して食事は進んでいく。
その間に俺が珈琲と紅茶を出してきて淹れてると、そう言えばとアツヤが言葉を紡ぐ。なんだーと返せばいろんな意味でびっくりするような言葉が返ってきた。

「昨日な姉貴から連絡あって…おめでたなんだって」
「は!?マジか!」
「その御祝いも買わなくちゃ」
「そーだなー…で、アツヤは?」

どうなんだよ?といった態度で聞いた瞬間一気に顔が赤く染まった。
同時にしどろもどろになって口からは小さく声が途切れ途切れに聞こえてくる。
そんなアツヤが可愛くなったのと、やっちまったなんて思いながら手に持っていたカップをテーブルに置いて頭を撫でて冗談だと言えば泣きそうな顔で、ばかぁー!と反撃を食らった。

「なら、何人欲しいんだ?」
「っ!…ふ、ふたりが良い、な」

「ぷっ、顔真っ赤!」
「ちょっ!なにそれぇー!ちゃんと言ったのに!」
「聞いてたって、けどまだ、ゆっくりアツヤとこうしてたい」

結婚したばかりだし。
まだ二人でゆっくりとしていたい。

それを聞いたアツヤは顔を真っ赤にさせた
本音なのだから仕方がない。
ほら、早くするんだろ?
なんて声を掛ければ、晴矢のせいなんだから〜!と返ってくる。
そんな怒ってるような照れてる表情をされても逆効果だし、その顔を見るたびに幸せになる。




お前がそばに居ればそれだけで
何時だって幸せなわけ。




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Let's become happy!』企画様にて
参加させて頂きました。
初のにょた。
書いてて楽しかったです!
参加させて頂きありがとうございました!



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