蒼い少女紅い林檎

□葡萄の童話
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「あんた達って、二人で会って何してる訳?」
福田が蒼樹嬢、に聞く。
蒼樹嬢は頬を少女のように赤らめて
「お話するだけです、、好きな色とか、モノとか、、綺麗なモノの話」
「俺としてた話と、変わんねーな!小学生かよ!」
蒼樹嬢は紅い頬をもっと紅く染めて、
「福田さんに言われたくないです!」
二人で、よく打ち合わせに使ったコーヒー店にいる。
「蒼樹嬢に先越されるとはね、、」
「、、、福田さんも誰かとお付き合いしたら?」
「俺、漫画バカだし」
蒼樹嬢は、福田を子猫のような瞳で見つめた。
「、、、私達、仲良くしてましたが、線をひいていましたね」
静かな声で蒼樹嬢が言った。
「、、そーかもな、、」
福田も呟いた。
「福田さん、なんて第一印象最悪で」
「それはこっちも同じだっつーの!」
「でも、、知れば知るほどいい人で」
蒼樹嬢の小さなため息が聞こえた。
「、、、そんでただの、いい人止まり?」
福田が笑いながらそう言うと
蒼樹嬢は真面目な綺麗な顔をした。
福田を真っ直ぐ見つめている。
「福田さんも、私も、逃げていたんですよ」
「なん、、だと?」
吹き出して蒼樹嬢が笑う。
「知れば知るほど、、お互いが、、好きになってしまう。怖くなってしまうほど」
蒼樹嬢はアラバスターのような、ふっくらした白い手に紫の大きな葡萄を載せた。
−怖くなってしまうほど、、、
福田は蒼樹嬢の言葉を繰り返した。
「漫画が描けなくなってしまいますからね」
そう言って蒼樹嬢は綺麗に笑って
福田の細い手の上に葡萄を置いた。
「葡萄、、は、、平等な愛のシンボルでもあるんですよ」
「ふうん」
「美味しいですよ」
「サンキュ」


俺は青い海と青い空と船の水際の紅い色を見て育った。
思い出す度
微苦笑が浮かぶ
美しい少女、がいる。
もう二度とは会えないと知りながら
今でも優梨ちゃん、がいたらなあと思う。
秋になると葡萄の房は紫色に美しく色づくけれど
それを受けた
アラバスターのような白い美しい手は
白い美しい少女は
永遠に
見つからない、、




一房の葡萄、より
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