蒼い少女紅い林檎

□葡萄の童話
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そう思ったら
子猫のような蒼樹さん
ポケットの中に入れるくらい、、、
ああ、胸が爆発してしまいそうだ。

僕は何がなんだか
全くわからないうちに
青い絵の具と紅い絵の具をポケットに入れてしまった、、、、、

福田くんは僕に詰めよった。
「みんなが競争している時に、違う事考えてたのは、あんただけだ」
「、、、そうだよ、、大体下らないじゃないか、、人生にはもっと大切なモノがあるんだ」
福田くんは、僕を偉そうに睨みつけて
「成功する以外に何が大切なんだよ、、」
僕は出来るだけ皮肉を言った。
「福田組だの言ってたの君じゃないか」
福田くんは、少し気まずい顔をしてから、
「蒼樹嬢は?」と僕に白々しく聞く。
蒼樹嬢、なんて失礼な呼び方をするのは
福田くんだけだ。
全く、バカな男だな、、。
僕達は喧嘩をしそうだった。
福田くんは人を殴り慣れているんだろう。
野犬みたいな目をしている。
対して僕はペン以上重いものなんて持った事がないんだ、、、。
「君はいったい、何がしたいんだい?」
僕は福田くんに尋ねた。
福田くんみたいな男には、決してわからない問い掛けだろう。
福田くんは不思議そうな顔をして僕を見た。
そうして
もう一度、尋ねてきた。
少しイライラしたように。
「蒼樹嬢は?」

僕は黙っていた。
知らない。
知らない。
知るものか。
当然のように綺麗なモノを持っていた
君には
全く
猫に小判
豚に真珠

僕のポケットから
妖精が出てきた。
微笑みながら。
右手に青い絵の具
左手に紅い絵の具
「、、、みんないい人です。平丸さん福田さん、これをどうぞ」
蒼樹さんがハサミでパチン、と、紫の大きな葡萄の房を二つに切って
一つは福田くんに
一つは僕に


大理石のような白い手に
葡萄を載せた、蒼樹さん。

秋は何度も巡るけれど
僕は知っています。
あんな綺麗なモノには
もう永遠に
出会わない事を。




一房の葡萄読んでなんとなく。
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