百年、待っていてください


□待ち合わせは、大嫌い
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潮風が二人を撫でる。
あなたの髪は私より長いから、時折、私の頬に、ふれる。
海を見つめるあなたの瞳は、穏やかで、綺麗で、ひきこまれてしまいそう。
いつも、険しくて鋭い目なのに、私は知ってるの。
優しい、綺麗な目を。
男の人は皆、邪な目しか、しないと思っていたけれど。

あなたはふいに、私を見る。
私は、今まであなたの横顔を見ていたのがわからないように、下の砂地に目をおとす。
耳が熱いの。
どうしよう。
「なあ、あんた、死ぬ、のって怖くねえか」
ぼつり、とあなたが尋ねてくる。
私が藤尾の事なんて考えていたのを見透かすよう。
私は顔をあげて、勇気をだして、あなたの真剣な瞳を見つめるの。
「怖くなんか、ありません。だから、今、一所懸命生きてます」
あなたは、少しびっくりしたような顔をする。
「だな」

いろいろな思いが浮かんでくるの。
幸せ、な時に死んでしまいたい、なんて言ったら、あなたは怒るのかしら。
でも、あなたと共にいる刹那、私は思わずにいられないの。
あなたを失うくらいなら、私なんて消えてしまえばいい、、、
そんな事を考える私は残酷で、嫌な女なのだろうか。
「もし、、」
心が溢れて口から出てしまう。
「え?」
思いかけず、優しく低い声で尋ねるあなた。
私がいなくなったら、、
あなたはどうするの
もし
私だけとり残されて
一人になるのがこんなに怖いなんて、、、
今まで一人でも大丈夫だったのに。
目元が熱く、なってくる。
一人に、しないで。
そう、言いたかった。

あなたはため息をついたようで。

肩に手を廻されて、少し、私は引き寄せられる。
自然に、私はあなたの肩に頭をつけて、こぶしの距離は縮まるの。
目をつぶって、肩にもたれる。
あなたの腕は力強いけれど、とても優しい。

波の音が、よく聞こえる。
潮騒が、私の心のように、寄せたりひいたり、、。

しばらく目をつむっていると、音楽が聞こえるよう。
この距離も心地良いの。
洗いざらしのシャツの匂い。

唇に、温かいものを感じて、私の音楽は止まってしまう。

こうして、いきなり距離が縮まるの。
自然に、、。

私は泣いているのかな。
嬉しいのかしら。
悲しいのかしら。

優しいあなたの細い指が震える私の髪を撫でる

ずっと、一緒にいたいのに
逃げ出したくなってしまう
あなたが距離を縮めてくると
私は怖くなってしまう

潮騒が、また、違う音楽を奏ではじめるの。

一人ぼっちで待つのは
嫌い。
そんなふうに、
したのは
あなた。

もう
一人ぼっちで
待つのは嫌い

待ち合わせなんて
大嫌い

潮の香りが生々しいの。



乙女だ〜一応。
谷川史子先生の乙女でサラッとした漫画、こういうの男の人にも読んで欲しい
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