蒼い少女紅い林檎

□特技なし
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小さな頃から両親は私に沢山の習い事をさせてくれた。
私、は、そう、、、
大好きなのは漫画だった。
それは解っていたのだけれど
進路は?夢は?と聞かれると
恥ずかしくなって
「漫画家」とは言えなかったし
今から考えると遅熟で、ぼんやりした女の子だったのだと思う。
沢山した習い事は
なんとなく、なんでもできた。
体操の選手みたいに細くて小さな胸の、中学生の私は有名なバレエ団の育成クラスに通っていた。
、、、だから運動不足になりがちな今でも、簡単なエクササイズはかかさない。
大体、見た目の優雅さによらず、バレエ、は過酷なスポーツなのだ。
A子はバレエが大好きで、太らないために
「プレーンヨーグルトしか食べないの!」と言っていた。
A子は、何か私にいつも対抗心を持っているようだった。
発表会の出待ちの時、私が読書していると
「優梨子ちゃん、いーいご身分ね!」などとキリキリした声で言うのだ。
中学二年の時の定期発表会で私が主役のジゼルに選ばれた時、A子ちゃんは悔しさをあらわにしていた。
「なんであなたがっ!!」
その時は面くらって酷く怖い思いをしたけれど今ならわかる。
ジゼルを踊り終わった時、先生に
「優梨子ちゃん、バレエでやっていく気はないの?私はあなたなら国際コンクールだって出られると思うし指導のしがいがあるわ。あなたには感性があるし、手足の動きがとても優美で、何より華があるわ!」
と奨められたけれど
ぼんやりと
私の進む道は違う、、と思っていた。
それに、バレエへの情熱ならA子のほうが上だ、と解っていたからかもしれない。
私はバレエを辞めた。
辞めても、音楽と踊りと物語の総合芸術のようなバレエは私を魅了するし
今でも、ちゃんと毎日、少しずつでもレッスンしている。
高校でもピアノは続けていた。
先生は厳しい人で、でも今まで沢山の生徒を有名な音楽大学に入れ、そして国際コンクールで入賞するような生徒を育ててきた。
ラフマニノフの曲を課題にされていた時、先生に言われた。
「優梨子ちゃん、T音楽大学を目指してみないかしら、、あなたの曲にたいする理解と感性は素晴らしいし、技巧についてはなんの問題もないわ、、あなたならきっと国際的に活躍できるピアニストにだってなれると信じているわ」
私はびっくりした。
「そんなこと、、ないです」
先生は少し残念そうな顔をした。
ある時、同門のBくんが私に声をかけた。
やはり読書中だった、、。
「青木さん!先生にあんなふうに言ってもらえる生徒なんていないんだよ!、、、僕なんて、、僕なんて、、一日10時間以上ピアノに触っているし、ピアノが大好きなんだ、、先生に本気で教えてもらえば、君なら夢が叶うのに」
B君は本気だったのだ。
私はピアノも大好きだった。
けれどB君のような熱心さを持ってピアノに向かった事はない、、。
恥ずかしくなって私はピアノを辞めた。
進路指導の時、先生に言われた。
「青木さん、あなたは学年トップです。もちろん東応大よね、、留学もいいかしら?あなたなら文系も理系も行けるわ。どうかしら、日本で1番偏差値の高い東応大の医学部、とかは?」
私は血を見るのは苦手だ。
「文系のほうで。、、、」
趣味は読書。
物語が好き。
でも本当は小さな頃から漫画が大好きで、絵を習った事はなかったけれど、見よう見真似で似顔絵を描いたり
、、先生に内緒で授業中に漫画のネームを描いていたり、実は、ドキドキしながら投稿もしていたりしたのだ。
私はできるだけ澄まして言った。
「文学部に」
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