蒼い少女紅い林檎

□雪の想い出
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ライトが設計した
この古い家に
私は帰ってきたの
アールデコの椅子に座り
マントルピースを眺めてる
「お嬢様が夢追いかけて漫画家なんて女の子らしい、本当に夢みたいな夢」
そう言われて
炎を眺めていると
炎のような
あの人を想いだす
、、、私の初めての王子様
口もきけなかった
片思いの人でも
こんな変わった私の為に綺麗な絵を描いてくれた人でもなく
本当の王子様
、、、笑ってしまうけれど
私の人生の
本当の、最後の王子様

話していると楽しくて
男性の気持ちが良くわかった
世間知らずだな!
いっつもそう言って
私の事笑ってた

私も本当の自分が出せて
恋愛漫画の恋愛のように
せつなくって
甘くって
じれったくって
、、、勇気も持って
本当に幸せな日々

雪が降ってきたみたい
曇った硝子に
筆記体でFの字を書く

好き、、、
私、大好きだったのに
、、、今でも紅い熱い想いが
澳火のように
心をあぶる

秘密の箱に入れたのは
あの人がくれた
蒼いマフラー
柔らかいカシミアで
大切にしてた

硝子には
雪が結晶になって張り付いて
マフラーして
外に出てみようか、、、

考えれば
あの雪の日に始まった
福田さん
そう言ってた
東京の雪はボタン雪
こんなさらり、とした雪じゃないの
結晶は降ってこなかった

、、、もとの生活に戻っただけ
夢、を見ていただけ
王子様、は白い帽子をかぶってた

「本当に夢みたいな夢」
叶えるために
思い切って跳んだのに
私の夢は箱の中

箱の中から飛び出したかった
ただ、それだけなのに

箱の外には怖い男の人ばかり
、、、王子様は守ってくれた
私のために
悲しいけど
笑えちゃう、、、
だって私達、パンツの話ばっかりしてたの!
そうして熱く語りあって
、、、アイシテマス
そう言えたらよかったのに
臆病な私は
やっぱり片思い

プレゼントあげた時
、、、恥ずかしいけど
告白する気で
紅いシャツあげたっけ

黒も似合うし
紅も似合った
一番強い戦士は紅
そう決まっているらしいから

、、、箱の中に戻っただけ
私に出来る
せめてもの恩返しは
貴方が描いた
漫画をいっぱい
この冷たい家の
広い書庫に
永遠に
置いておく事

貴方から沢山貰った
短いメールを保存した
この小さな
ちっぽけなメモリが
私の永遠の青春の記録

あの大きな声が
聞こえない、、、
「会話」は保存できないから、、、

淋しくて
切なくて
今でも涙が溢れ出す

もう二度と
あんなに愛せる人は居ない

本当だったら
オフェリアみたいに
哀しい歌を唄いながら
花と一緒に
流れていけばよかった、、

「優梨子」
と呼ばれて振り向いても
貴方じゃないの
、、、王子様じゃないの

「人形みたいな綺麗な優梨子、、、雪が降ってきたね、、白い雪みたいな綺麗な優梨子」
私を抱きしめる人は貴方じゃないの
だって、ただの「仲間」だから
私の片思いだったから

箱の中で決められた
私、に相応しい人が私を抱きしめる
私は貞淑な妻になる
−お堅いな!て皮肉を言ってた
、、、本当はこの腕から飛び出したいのに
いいの、、、綺麗な思い出だから
ちょっとおかしな私達の青春
私と福田さん、の青春
永遠に秘密の箱に
閉じ込めるの
心も一緒
蒼いマフラー
、、純白のパンツ
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