蒼い少女紅い林檎

□乙女の夢
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つい最近まで暑い日が続くと思えば、秋めいた風が吹き、何故か憂愁の気持ちが湧いてくる。
−らしくねーな、、
福田は思った。
秋になると強く思い出す光景がある。そして冬になるともっと鮮烈に思い出される光景がある。
白い細い首と、うなじがすっきりした美人がいる。
フンワリとした雰囲気と清楚な姿はオーラを出していて、振り向かなくても「綺麗な女の子」であると解る。
待ち合わせしたファミレスで、後ろから近付く福田である。
−なーんか、、、後ろ姿だけでも襲いたくなるっつーか、、あぶねーな、、やっぱ今度は迎えに行こう
細い肩を震わせている。
読んでいるのは、全くこの女性に似合わない雑誌。
少年漫画。
−今日は隣りに座っちゃおーかなー
「おっす」
福田が隣に座ると、蒼樹嬢は赤らめた頬をあげた。
「見本本?はえーな!おもしれー?俺の」
蒼樹嬢はニッコリして
「ルフィ最高です」
福田は内心ガックリきた。
「おもしれー?やっぱりな!」
蒼樹嬢は夢見るような瞳で
「結婚はしねえ!!食い物ありがとう!!、、、はあぁ、、」
海賊女帝のように頬を染めた。
「、、、結婚したかったんじゃねーの?」
「メロメロメロウです、、」
福田はジャンプを取り上げてサッと読んだ。
女、て本当にわかんねーな!
「こんな風に言われたいワケ?」
ハンコックのように頬を染めた蒼樹嬢が
「ルフィなら言われたいです、、、」
と、ウットリと言う。悔しいほど甘い声だ。
なんとなく悔しくなって福田は吐き捨てるように言う。
「っつたく!これだから二次元の女は!」
「あら、福田さんに言われてもいいです」
福田は心の奥を覗かれたような気がして、一瞬怯んだ。
「、、、なんだよ、、。学生結婚素敵です、とか散々言ってたくせに、、」
「こんな風に言って去るカッコイイ人を待つのも素敵です、、、」
「、、、ワケわかんねーな、、Mか!」
蒼樹嬢がキッと睨む。
「いやらしい表現を使わないで下さい!」
「ふんっ!文学用語だろ!」
「福田さんが言うと、なんでもいやらしく聞こえます、、」
福田は言い返そうと思ったが止めた。
言い合うのも楽しいが、そんな事より、このワケの解らない、いい女の考えている事が知りたい。
「こんな風来坊みたいな男を待つのもいいワケ?」
「大きな夢を追い掛ける人をひそかに待ち続ける乙女も素敵です」
「一緒に居られなくても平気なワケ?」
蒼樹嬢は甘いため息をついた。
「好きだったら一緒に居たい、、けれども織り姫と彦星のように一年に一回とか、パイレーツオブカリビアンのオルランド様のような切ない関係も素敵です、、」
現実的な福田には、全てがメルヘン思考に思える。
確かに、好きな女さえ後に残して航海に出るのも男の浪漫だが。
「結婚はしねえ!!食い物ありがとう!!」
蒼樹嬢の耳元で大きな声で言った。
ビクッ、と蒼樹嬢が震える。
「、、、す、素敵です、、。福田さん、、」
なんだよ!
簡単すぎる女だな!
「福田さんに、その台詞が似合います、、」
蒼樹嬢の頬が益々紅に染まった。
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