百年、待っていてください


□百日紅
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炎天の地上花あり百日紅

洗濯物を干そう。
パン!とたたいて。
マスールに教えてもらった。
下着はフランスのが好き。
バルコネットの白いのが好き。これは、タオルの陰に干すの。
朝一番でお洗濯するのが、好き。

ベランダにピンクの花が、飛んできたの
私は、その小さい桃色の花を手に取って、周りを見渡した。
ああ、百日紅。
もう九月なのに、気付けば、ずっとこの花は公園に咲いていたのだっけ。
もうすぐ、この花も、終わってしまう。
百日も咲きつづけたのに。
こんな季節の移ろいにも、いつしか鈍くなってしまっている自分に、
なんだか、違う人みたい、と思ってしまう。

炎天の夏、私は何をしていたのだろう。
あの百日紅が咲きだしたのは、いったい、いつ?

蝉の鳴き声もせつなそう

公園を見渡すと、一本だけ、ひと際紅いフーシャピンクの百日紅

思いだして、私の顔も紅くなる

あの時、咲いていたじゃないの

大好き、て思わず言ってしまった時

それから抱きしめられて

、、あのひとが優しい事を言ってくれて

熱い。

まだ、夏の盛りみたい

そう、別れ際に、、
思い出すと、胸が、苦しくなるの

あのひと際紅い百日紅の木の下のベンチ
あそこで、、、

私は唇にそっと触れてみる
あのひとの
跡が残っていないかと

違う世界に連れていかれそう
そんな気持ちになったあの時

炎天の地上花あり百日紅

月夜なのに、まばゆく白い真夏の光りにあの花が咲いているのが浮かんでいたの

唇の、跡

心の、跡

熱いの。
眩暈が、する。

お部屋に戻って
30分だけ、編み物しよう

白い毛糸で
アラン模様の網図をみながら
祈るように
愛しいものに触れるように
網目をひとつ、またひとつ
ケーブルを重ねて
ふわふわにして

想いをこめて
綾を重ねて
白い毛糸
白い想いが
編みあがっていきますよう

何よりもの証だから
私が今生きていて
あなたを想っていることの
私だけの
内緒の証拠
一日、一日編みあがって
その30分の
生きている証

ベーカリーのパンも焼けた
焼きたてのパンと
紅茶にサラダ
朝の始まり
一日の始まり

まだ、熱い。









虎皮じゃないけど、とりあえず、死んでも、編み物が残る、なんて気持ちで編み物してた時があったっけ
ちなみに、度を超して飲みすぎると、世界は白銀になります
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