福田くんの受難

□聖ヴェロニカの初恋
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自分の事は棚にあげて、こいつの過去は気になる。
男性とおつき合いなどしたことはありません、なんてけろっと言っていたけど、本当だろうか?
こんなに綺麗でフワフワモコモコして、後ろ姿だけでも襲われそうなのに。
全く信じがたい。
嬢が恋愛マンガの勉強のために、「初恋限定。」を読んでいる。
「あれ、、な、なんで泣いてんだ!」
「、、うっ、、駄目です。これ、、千倉ちゃんの、、」
「ああ、これ少女マンガちっくね」
と皮肉をつい言ってしまったが実は意外と好きだった。パンチラは出ないけど一番清純で可愛いのが千倉ちゃんの初恋だ。
「わ、私の初恋も、、こんな感じでした、、」
嬢は、はらはらと涙をこぼした。
嬢の初恋だって!
「誰にも話した事もないし、このエピソードにそっくりですからマンガにもできないんですけれど、、」
「ち中学の時か?聞かせろよ。俺も参考にしたいからな」
なんだか俺はイラついていた。
「高校一年の時、、文化祭に展示する絵を描いていたんです」
「絵も描いていたのか」
「はい。細々と。美術部兼マンガ研究会でしたが、陸上部と兼部してました」
「まあ、どこの学校でも美術部とかアニメ漫研部とか幽霊部だよなぁ、それで?」
「私はひどく人見知りで、、、でもその人は」嬢の涙は溢れそうだ。
「聖なるオーラを持っていて」
「なんだソレ?また訳のわかんない事を」
俺がそう言うときっ、と嬢が睨んだ。
「その方はラセールの三年生で、秋の風景の油絵を二人で共同製作したんです」
「へーえ」
「つまり千倉ちゃんは桜を描いていましたが、私たちは紅葉を描いていた訳で」
少し馬鹿にするような言葉が出る。
「へーえ。そいつも海外ボランティアに行っちゃったのか?」
「ではなくて神父様になると、フランスのラセール神学大学に、、」
「、、つまりぼーさん、て事?」
「、、、とにかく、神に呼ばれた特別な人なんです。一生を神に捧げるんです」
「結婚とかしねえの?」
「しません」
俺はなんだか少し悔しくなる。
「ふーん。好きだったら告れば良かったじゃねえか」
「そんな事、できません」
意地悪を言いたくなる。
「プライドが高くて?」
「違います!、、は、恥ずかしくて、、」
嬢の顔は紅に染まった。
畜生。
千倉ちゃんみたいに可愛いじゃねえか。
どんなヤローだよ!そいつは!
「そいつだってあんたの事好きだったかもしれないじゃないか」ムカつきながらも俺は言った。
「そんな事!あり得ません。だいたい神父様になる希望を持つような人が女性を好きになどなりません」
馬鹿だなぁ、、嬢は。訳のわかんない世界に生きていたんだなぁ。
「その方が紅、というペンネーム考えて下さいました」
「えっ!なんだよソレ」
「私のイメージが紅い色だと、、」
そうして思い出すようにうっとりした目で遠くを見つめている。
、、馬鹿だなぁ。そいつ、嬢の事好きだったんだぜ。じゃなきゃそんな事言うもんか。

小百合ちゃんに修道女の格好をさせてみた。1ポンドの福音を参考にして。
結構いけるなあ。
小百合ちゃんは全く謎の女だ。



白河聖人の告解、、そうなんだよ、白河くんは優梨ちゃんが好きで蒼白紅のトリコロールになりたかったんだ

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