福田くんの受難

□ドンペリとドンブリ
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「お澄ましでいいですかー」嬢がまた違う着物を着ている。
「黄八丈です、この着物。お祖母様の形見です」
黄色いチェックみたいな着物に白い割烹着、小料理屋の美人女将みて。駄目だよ。こんなにいろんなもの似合って。
平丸さんももちろん呼んだそうだ。
「平丸さん、天涯孤独なのですよ」と嬢が言っていた。
そういう会話してるのか。
天涯孤独ね。そういえばなんだか浮き世離れしてるって感じは嬢と似てる。
電波があっているのか、、。
もっともあいつは、美人で年下なら誰だっていいんじゃないか。駄目だよ。
平丸さんがピンドンマグナムボトルと白い薔薇の花束持ってやってきた。
いったいいくらかけてんだよ。
「まあ、大好きです。白い薔薇。それにドンペリニョンではないですか」嬢もびっくりしている。
え、やっぱりこんなもので喜ぶのか?
「皆さん、車もしくはその類のものでいらっしゃっていませんよね?」
うん、うん、と俺達はぶんぶん首を縦に振った。こんなの一杯や二杯ひっかけたって何も変わらないけどな。
「シャンパングラスはないので、、」
嬢は小さいグラスを平丸さんと自分の前に置き、
俺の前には丼、、、、?

「何コレ?」
「福田さんにはお似合いですよ」
「何だよ!ソレ!」
嬢がうふふ、と笑っている。
馬鹿にされているのか?でも可愛いから許す、、、
箸がちゃんと飾りのついた袋に入って真太、てきれいな字で書いてある。
うわっ、こんなの懐かしい。
「こんなお正月初めてです。今年もよろしくお願いします」
嬢がきちんと手を揃えて礼をした。
「は、はいっ」俺達も思わず緊張した。
「福田くん開けてくださいよー」
平丸さんがピンドンを俺に渡した。
「やってもいいの?」
一瞬シャンペンシャワーを思い浮かべたが、、、
「危険です。私がやります」と嬢がちょっとびびりながらポンと開けた。
「危険ですってどーいう意味?」
俺は嬢を睨みつけてしまった。嬢は澄ましてやがる。
あ、、もしかして右手の怪我の事?そうかな、そうだよ、そうなんだ。
とりあえず乾杯。
本当にこんな正月久しぶりだ。
嬢が作った雑煮とお節料理的なものを食った。
ヤバイ煮しめがお袋の味に似ている。
俺はなんだか感慨深く黙って食っていたが平丸さんと嬢はなんだか訳の分からない事を話していた。
「そうなんです。実は漱石が言いたかったのは赤シャツは軍国主義のシンボルで」
「そうです蒼樹さん。最後にぶつけた卵にも意味があって、、、ああなんと哲学的な、、」
ほんっとに訳わかんねえぞ。糞面白くもねえ。
マンガの話を語れ!
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