兎に角叫んで逃げるんだ
□馬鹿は死んでも
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…で、取り調べされてます。
「…お父さんの形見だぁ?嘘だろ。銃刀法違反者がよく使う言い訳だな」
歩き煙草の男はかの有名な真選組鬼の副長、土方十四郎と名乗った。噂や流行に疎い涙歌だがそれくらいは分かる。
これまた厄介なのに捕まったよ…
「取り敢えずこの刀はこっちで預かっとくわ。廃刀令のご時世にぷらぷら刀さげてんじゃねェよ、ばかか」
「エェェェ!?預かるって…ちょっ、旦那ぁ勘弁してくださいよお…」
「おい、だーれが旦那だ。当たり前だが預かるっつったら預かるからな」
結局、上京早々ターミナルからパトカーで真選組の溜まり場らしい屯所に連行されて刀を奪われました!酷いよね!
警察がか弱い少女から物を盗むなんてありえない…本当に江戸って変だよ…
「斉藤…だったか。特に攘夷浪士との癒着も無さそうだしもう帰って構わねえ。もう捕まりたくねーなら大人しく生きる事だな」
余計なお世話だし!と土方という男にあっかんべーをお見舞いして屯所を出たらもう外は薄暗くて、地平線に太陽が半分くらい沈みかけていた。
初日から最悪だし…気を取り直して
「銀ちゃん探そっとーっ」
せっかく江戸まで来たんだ。
このままだと真選組に捕まっただけで記念すべき初日が終わってしまう。
よく考えてみれば銀ちゃんやヅラ…相変わらず宇宙を飛び回ってるらしい坂本に世界をぶっ壊そうとしてる晋助と別れてからずいぶん経つ…な。
あの頃は若さもあってか、みんな行動が滅茶苦茶でかなり手を焼いた。
銀ちゃんと坂本が河原なんかで酒を呑むもんだから、案の定酔っ払って真冬の川で服のまま泳ぎ出しちゃって翌日見事に風邪を引いたり…
なんて、過去に浸ってたら。
かぶき町の喧騒の中に懐かしい銀髪の
「銀、ちゃん?」
見つけた長身の着流し姿の男に恐る恐る、呟くように、懐かしい名前を呼んだ。
少し離れた彼はちらりと目を向けてきて
あの赤い目は…やっぱりそうだ。
「銀ちゃんだよね…?」
確信に変わった。
呆気にとられたような表情のまま固まってる彼に近寄ってみれば懐かしい匂いが。
「涙歌…だよな、やっぱ」
銀ちゃんは信じられないといったように涙歌の顔を覗きこみ、そして頭をわしゃわしゃと撫ぜ回した。
「も、…私子供じゃないんだよっ!」
「確かに少し身長
伸びたか。元気だった?」
「身長とかじゃなくてホラ、私もう大人だし。銀ちゃんも元気そうでっ!」
また可愛くなったなオイとか何とか呟いてる銀ちゃんもまた、大人の男の人 になっていて。
ちょっと格好いいかも、なんて
「銀ちゃん老けた?」
今になっても素直に言えないんだよね