テイルズ学園

□転校初日
1ページ/1ページ




私はある教室の扉の前で大きく息を吸い、そして吐いた。

私立テイルズ学園。
今日からここがわたしの第二の母校である。

転校初日。ここでうまく馴染めるかどうかが、私の学校生活の運命を握っている。
なんでもすごく個性的なクラスらしいので、その点ではすごく不安だ。

ガラリと、扉が開いて、担任の先生が出てくる。


「入ってきてくれ、紹介する」

「あ、はい」


クラトス先生、だとか言ったか、この先生。
緊張で手汗をかきながらも、壇上の上に登り、ふう、と息を吐いた。


「初めまして、一条春菜です。よろしくお願いします」

ざわざわと騒ぎ始める教室内。

「おいおい、コレット、ジーニアス、転校生だってよ!」

「そだね、とっても可愛い子だね!」

「んも〜ロイドもコレットも、はしゃぎすぎだってば。すごく緊張してるじゃない?あの子」

なんだか歓迎されている感じで、少し緊張がほぐれる。

「では、お前はロイドの隣の席になる。あいつに色々、この学園のことは教えてもらえ」

「あ、はい」

なんかクラトス先生適当な感じがするのは気のせいなのかな。
私はこっちこっち!と手を挙げる元気な茶髪少年の横に座る。

「よろしく、えっと…」

「俺のことはロイドって呼んでくれ!こっちはコレットで、こっちがジーニアス。皆友達さ」

可愛いブロンドの女の子と、シルバーの男の子ににこりとされる。

「よろしく。私は春菜でいいよ」

「分かった!なんでも困ったことがあったら言ってくれよな!」

「あ、じゃあさっそくだけどロイド、頼みごとがあるんだけれど…構わない?」

















「ありがとう、ロイド。付き合ってもらって」

お安い御用さ!と輝かしい笑顔を向けるロイド。
まだ転校したてで、校舎内のことが全然分からないのだ。
なので、学校の案内をしてもらっている。


…それにしても、ヤバイ、ヤバイよロイド。


ロイドの笑顔に、惚れてしまいそうだよ。


何を隠そう私は、まだ一度も男性とお付き合いしたことがない。
中学校は女子高だったし、男性の免疫もない。
そんな私がはまったのは、恋愛小説だ。
もちろん、一番好きなのは王子様キャラ。
話の中のキャラクターにのめりこみながら、いつかはそんな人と恋、というものを味わってみたい…そんな夢がひっそりとあるのだ。
ロイド・アーヴィングというこの男は、まさにそんな小説の主人公にとても近い!!(※彼はTOSの主人公です)
更に転校初日で不安な時になんでも頼ってきてくれ、と言われれば…好きにならない女の子はいなくないか!?(※彼は攻略王です)

真顔の裏で鼻血を流しながら親指をぐっとたててておく。


「え!?なんか鼻血出てるけど大丈夫か!?」

「大丈夫だよ心の中でだもん…ってええ!?本当に出てるぅ!!」


ロイドが驚く傍らで、思わず近くの女子トイレに駆け込んだ。
わ、私ったら!!本当に出してしまうなんて!




…っていうか、これから1年ロイドと一緒に同じクラスで過ごせるのって幸せすぎじゃない?


鼻血をふいて女子トイレから出てきた私の顔を、心配そうにのぞき込むロイド。


「大丈夫か?」

「う、うん、もう平気。ごめんね、ちょっと疲れたのかな?」

「そうかもな。どうする?あとは三年校舎だけなんだけど…今日はやめとくか?」

「だ、だめ!!」

「お、おお、そっか…?」


ロイドと一緒にいれる時間が少なくなってしまう!と危機感を感じた私は思わず引き留めていた。

なんか、ちょっと必死すぎてキモイやつになっちゃったけど、ロイドはじゃあこっち、と案内を続けてくれた。


「三年生にも、俺の友達けっこーいるんだ!紹介しとくよ!」

「へえ、そうなの。ロイドは人望があるのね」

「へへ、まあなっ!春菜はちょっと変なやつだけど、可愛いし、すぐ人気者になれるぜ!俺とも気が合いそうだし、これからもよろしくな!」

「あ、ありがとう…そんな、可愛いなんて…」

ん、変な奴?
と、少し気になったが、ロイドに可愛いって言われたことで悪い情報全てがかき消される。

「あのクラスはいろんな面白い奴がいて楽しいぜ!またみんなのことも紹介するよ!」

「うん、個性的なのは十分わかったかも…」


なんて他愛もない会話をしていると、もう三年校舎のようだ。
へぇ、一番左側の棟なんだね。
それにしてもこの学校は。隅々まできれいだ。
転校する前に聞いたが、なんでも国の有力者の息子もいるため、懐は潤沢らしい。
ま、そんないいとこの坊ちゃんを入学させるようなところだ。
元からしっかりしているのは当然だろう。


そこで、ふと。

少し遠目に、綺麗な紅が近づいてくるのが分かった。

近づいてくるにつれ、私はその人に釘付けになった。

とても、美しい顔立ち。きめのこまかい肌。少し妖艶な目。

どこをとっても、美青年、としか形容ができない人物。


目をまんまるにして、それに見惚れる。




…やばい。

…ド、ドストライクだ。





うっ、鼻血が!

出そうになったのを、なんとかこらえる。



「お!よう、ゼロス。春菜、紹介するぜ!」

「おやおや〜、ロイドくんでねーの。こんなところでなにしてんのよ」

「こいつ、今日俺のクラスに転校してきたんだ!三年校舎を案内するついでにゼロスに紹介しようって思ってさ」

「なるほどねぇ。ロイドくんは相変わらずやっさしい〜」

「春菜、俺の友達のゼロスだ!まぁ年は一個上だけど、頭ん中は俺よりバカだから安心してくれよな!」

「ちょ、待って待って。何その紹介の仕方?嫌がらせなの?俺さま恨み買うようなことした?」」





「は、は、はい…よろしくお願いします…」





そんな紹介を受けたけれど。
ロイドは全力で笑顔だけれど。

まさに彼は、私が思い描いていた通りの、王子様。

まともに顔を見れるわけがない。



だ、だって、かっこよすぎるんだもの…!!!!!!


こうして、私は早速、この学園で運命に出会った。





…と、このころの私は思っていた。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ