TOS

□君は知らないだろうけど
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「おーい、ハル!」

どこからか聞こえるロイドの声。
後ろを振り向くと、居た。


「はむ……ん?」

メロンパンを食べていたハルはそれを口の中に入れながら返事をした。



「剣の稽古してくれよ!」


「あむあむ……うん」


メロンパンを飲みこむと、首を縦に振りながらOKのサインを出す。
ロイドは嬉しそうに笑い


「ありがとな!そんじゃ、庭に来てくれよ!」

「うん」

と言って走って行く。

メロンパンを食べ終わると、自分の懐からまたもやメロンパンを取りだす。
そして、袋を破くと黙々と食べだした。

もちろん、庭に向かう足は止めずに。

















「ハル遅いなー…」


素振りをしていたロイドは、ハルが遅いと呟き剣を止めていた。
すると、そこに

「あ、ハル!!」

「もぐもぐ…」

「何メロンパン食ってんだよ〜…稽古できねぇじゃん」

その言葉にカチン、と来たハルは(何故かは知らない)腰に刺さっている長い剣を抜き、一瞬でロイドの後ろに回り込む。
まるで、瞬間移動のように。


「メロンパン如き持ってて、稽古出来ないことなんてないの。…分かる?」

剣をロイドの首元に当て、にっこりと微笑むハル。
ロイドは口角を引きつらせ

「はい…さーせん…」

と、返事をした。

「ん、よろしい」

剣を離すと、ロイドとは向かい合う形に立つ。

「よし!行くぜ!」

「うん、何時でもいいよ〜」

へらりと笑って最後のメロンパンの破片を口の中に放り投げる。

「魔人剣・双牙!!」

ハルはそれを華麗に魔人剣で粉砕し、ロイドの第2破も短い動作で避ける。

「くそっ」

ロイドは一旦引き、体制を立て直す。
ハルはまだ一度も攻撃していない。


「秋砂雨!!」

ロイドが叫び、ハルの懐に入る。
次の瞬間素早い突きが4連続で出される。
しかしハルは微動だにせずキンッと剣でどれも弾き返す。

ロイドはまたもや引いてしまう。

「く…」

「…そろそろ私も行くよ!」

ハルはひゅんっと空高く舞い上がると、一気にロイドとの間合いをつめる。

「散砂雨!!」

「う、ぐっ…」

それをなんとか剣で防ぎ、高く飛びあがる。

「…っ」

やばい…あれが来る…!!
そう思ったのも束の間、まだ攻撃の反動が残っており、素早くは動けなかった。

「鳳凰天駆!!!」

「うあっ!」

剣はハルの顔の横に突き刺さってい
た。

失敗したな…
私、この技だけは…

「へっへ〜俺の勝ちだな!」

「…う」


こけてしまったが、立ち上がれない。
何故なら、ロイドが私の上に馬乗りになっているから。


「…あれ?抜けねーや…」

剣が深く地面に刺さってしまった為、抜けない。

「…あの…さ」

ハルが恥ずかしくて死にそうな声を出す。

「…」

しばらくの沈黙。

「うわぁ!!ご、ごめん…」

気付いたのか、ロイドは顔を真っ赤にさせながら離れる。

「…」

ハルはぱんぱんと服についた土を落とし、立ち上がる。

「…まったく…ロイドのバカ…」

「え?何だよ?」

「なんもない!ふんだ!」

怒っているかのように見えるが、恥ずかしいだけである。
腕を組みながらロイドと視線をずらし、顔を真っ赤にさせている。


「ハル?」

「何!」

「俺が勝ったんだから、ご褒美くれよ〜」


にかっと笑うその笑みに、悪意はないよね…?
変な事考えてないよね?

「…ど、どうしよっかな…」

「えーくれよ〜俺、お腹空いたし…」

最後を呟きしゅん、と項垂れる。

「じゃ、じゃあ何が欲しいの?」

ハルが聞くとロイドは真剣な眼差しで、嬉しいのか悲しいのか分からない表情で苦笑しながら言った。


「お前が欲しい」












「…え?」





変な声を出してしまった&声上擦ったぁぁぁ
っていうか何言ってんのロイドぉぉぉ!


「…なーんてな!なんでもいいよ、ハルがくれるなら」

すぐにあの複雑な表情は消える。





…バカ

本気だと思ったのに

あのね ロイド

君は知らないと思うけど…

私、貴方の事が




「じゃあ、目、瞑って」


「ん?こうか?」


「絶対開けんなよバカ」


「わ、分かったよ…」



ドキドキする胸を抑え、ロイドに近付く。


「…っもう絶対、稽古なんてやらない…」



そう悪態をつき、ロイドの頬に軽く口づける。


「…え?」



「…ッバカ!私は先に帰る!」





好きなんだよ















君は知らないだろうけど
お前は知らないだろうけど俺、お前の事が好きなんだ


(何?すれ違ってる?)   (あれ、正しいんだよな?)

     (好き、だし…)




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