倉庫2
□拍手文
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本日休業、というえらく堂々とした筆文字には見覚えがある。
貼紙の前で、一護はかすかに眉をひそめた。
(テッサイさんの字だ…)
あのぐうたらな店主ならともかく、わざわざテッサイが貼紙をしたということなら、全員外出しているのかもしれない。
いつも開け放している店先はシャッターが降り、ひゅう、と通りすぎた風は土埃をまきあげた。
「…いねーのか」
ぽつり。呟いた自分の声があまりにもさびしく聞こえて、一護はあわてて踵をかえす。
こんな弱い声、誰かに聞かれでもしたら大変だ。
特に、神出鬼没で一護をからかうことに全力をつくすような誰かさんの耳にはいったら面倒…。
『アラ、帰っちゃうんスか』
「ッ」
思いきりよく振り返った視界には、ぴたりと閉まったシャッター。風が、いたずらに吹きつけては、貼紙を撫でていく。
声が聞こえた。…気がした、のに。
「アホらし…」
表情を歪ませて、一護はふいと顔を背ける。
いつの間にか胸を占めていた想いが、今はただ、苦しかった。
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