素敵小説

□赤裸々プラトニック
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「おい、土方さん、」
「はい?」
三回目でようやく気付きやがった。土方の野郎、気の抜けた返事しやがって。

「あんた、最近、ちょっとヘンでさァ。万事屋の旦那となんかあったんですかィ?」
「な!んで、万事屋!?」
げ。普段っから開きっぱなしの瞳孔がさらに開いて、気持ち悪ぃ、この人ほんとはもう死んじまってんじゃねぇの?

「あんた、反応しすぎでさァ。」
「な、なんのことだ!」
「だから、旦那のことでさァ。あんた、あの人のことまさか」
「あーッ!!近藤さんに呼ばれてたの忘れてたー、じゃあな、総悟ッ」
「…」
わかりやすすぎる。

どうやら、我らが鬼の副長こと土方十四郎は、
恋をしているらしい。
それも、男に!
そしてその相手は俺の知っているあの人に違いないのだ。
おもしれえ。
これはしばらく見守ってやるべきだ。
男に振られる不様な土方が見られる!その時まで、
「見届けてやりまさァ」



どうやら、その二人は、自分達の不自然さに気付いてないらしい。
だが、その様子はどう見たって…。

「あ、銀さ、」
なんとなく、呼び掛けようとして、あげた手を慌てて引っ込めた。
だって、銀さん、そのツレは、ないと思うよ。
その、ぴったり横に並んで歩いているのは、全身真っ黒の男だ。
その、隊服、真選組、しかもその人、鬼の副長さんじゃない!
一瞬、銀さん、悪さして捕まっちゃったのかと思ったら。
この二人の、甘酸っぱい雰囲気に気付いたんだよ!

どこに隠れようかきょろきょろしてると

「長谷川さん」
ああ、銀さん、となんかすごい顔をした男が。
「よぉ、銀さん、さ、散歩?」
「えっ、あ〜、そう、散歩散歩…」
きっとただの散歩なんかじゃないんだろう、
だって、ちょっと、あんたたち、その密着はないんじゃないか!?銀さんの右側にいる男は、少し後ろから、銀さんの腰のあたりに、なんというか、たぶん、密着させている、足、なんか重なってるし!

む、無視しようにも、こんなあからさまにくっついていると、何か言わないと、いけない、気がして…

「そちらは、もしかして、銀さんの、彼氏さん的な、なにか、なのかな、あはははは!!」

あ。こんなこと言うつもりじゃなかったのにぃぃ!
ん、んん?
真っ赤になってるよ銀さん…(こんな顔した銀さんとか初めてだよ!?)
うわあああ!!!
なに、その隣の人、なんか瞳、真っ黒で空洞みたいなんですけどっ!
あ、あんたら、ここ、笑って否定するとこでしょうが!!
ねえ、銀さん、あんた、やっぱり、いいひと、できちゃったんだね?

「なに言っちゃってんの、長谷川さんたらぁ、こ、これはぁ、ダチだ、そうだ、ともだちんこだ、あは、あはは…」
「…」
「…」
ちょ、銀さん、いまそこでそんなこと言ったらヤバくない!?
なんか、生々しいんじゃない!?ちんこ、とかそんな、ああ、銀さん、とうとうそんなちんこのおともだちできちゃったのか、マジでかよ…
と、ひとの頭をパニックにさせたまま、銀さんは、《ともだちんこ》に引っ張られて行っちゃった。
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