素敵小説

□厄介な一目惚れ
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土方先生が、すきだった。担任になった頃には
あまりにも美形、なのに目付きが悪く横暴なところが、どちらかというと苦手な部類だった。
けど、ときどき、ほんの一瞬だが目が合うと、
その鋭い目に、ほんの少し淋しげ?な色が浮かぶのに気が付いて、それが妙に気になって、いつのまにかこんなにも好きになってしまっていた。
でも相手は教師で男で、
どうしたって手が届く相手ではなかったし、
なぜ男の先生なんかを好きになってしまったのか、
このところ、悩んでばかりの日々…



真っすぐ家に帰る気がしなくて、さんざん寄り道したりして、公園を横切っていたら、ベンチにぷかりと煙草の煙を吐く、中年のオッサンがいた。
「あー、長谷川さん」
駆け寄ると嬉しそうに
「よお、銀さん、ガッコ帰りかい?」と聞いてきた。長谷川さんは、短期間だがコンビニでバイトしてた頃の、バイト主任だったが、今はクビになってたまにこんな風に公園なんかで見かけるのだ。
煙草…
あれ?この煙草って、
…。

**
車で、公園の横を通り過ぎようとしていたんだ。
ベンチに並んだ頭が二つ、一つは銀色…
次の瞬間、俺は車を止めていた、なぜかって、
坂田がいたから。
それも知らないオッサンから、煙草をくわえさせられている。
見たこともないうっとりとした表情で、頭まで撫でられている。

「坂田、なにしてる」
自分でも恐ろしい程に冷たい声が出た。
「ひ、じかた先生…」
坂田が驚いて目を開いた。先程までのうっとりとした表情が怯えたものに変わったのが気に食わない。

「来い」
坂田の腕を強く掴んでベンチから立たせて乱暴に車に押し込み、発車させた。

「銀さん、だ、大丈夫かなぁ…」
残された長谷川は茫然と走り去る車を見送っていた。
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