素敵小説

□厄介な一目惚れ
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困ったもんだ。

煙草の煙と共に今日何度目かのため息を吐いてしまう。
原因はあいつだ。
俺のクラスの銀髪の。
坂田銀時。
授業はすぐにサボるし、
天然だというがあの銀髪、見た目同様、性格もぶっ飛んでいる、

土方が〈困っている〉理由はそういう、クラスの問題児を心配する担任、
などという真面目なものではなくて


一目惚れだったのだ

ああ、これがそうか、一目惚れか!とあまりにもすとんと落ちたのだ、恋に。
その髪なのか、その透き通るように白い肌なのか、
今となってはどの要素がきっかけだったかなんて、もうわからなかった。

ただわかりすぎる程わかるのは、この想いは間違っているという事実だ。
分別ある大人で教師の俺は生徒にそんなような感情など持ってはいけない。
恋だと確信したその日のうちに、その想いにそっと蓋をした。
それでも学校でその銀色の生徒を目にする度に、
どうしようもない感情が溢れる。

とりあえずでいいから。
しばらくは、そう、卒業するまででいいから、こんな想いには目を瞑るんだ。
そう思ってはため息を吐くのだ。




**
「おーい、どうした、坂田メシ残して…」
昼食を食べ終えた近藤、沖田らに囲まれて、銀時は机に肩肘ついてうなだれている。いつも以上にだらしなくやる気ない様子。
「ほんとだ、クリームパンは半分、苺牛乳なんてストローも挿してやせんぜィ?一体どうしたんでさァ」
「うるさいなぁ、もう放っておいてよ。別に具合が悪いとかそんなんじゃねぇんだよ」

「ただ食欲がない、てぇのは、銀時さん、もしかして、イイ人でもできましたかィ?」
「…んなんじゃねえよ」
と言いながらも妙な表情をしていたから、ははん、本命がついに出来たんだな、と沖田と近藤は気付いた。女にまめではないし、来るもの拒まずだし、去るもの追わずのふらふらとしている銀時だが、その見た目の奇抜な上に、やさしい綺麗な顔立ちで、いままでも
ちらほら女の影はあったけど。
「銀時さんの本命、一体どんなひとなんでしょうかねィ…」
彼の想い人は。
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