-[Wonder&Shot]-


□第一話 ある旅人の男性の話
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***

 僕が旅に出たのは、何と言うことは無い、単に放浪の旅に出たかったからだ。


 どうせ連れ合いもいなかったし、自由な人生を生きようと思った。


 ただ、それだけのことだった。


 危険なことも、楽しい出来事も辛い別れも、様々なことを経験した。


 定住するよう誘われたこともあったけれど、こうして旅を続けている。


 今ではもう、立派な旅人だ。





 そして今日、聳え立つ名の知らない山脈のふもと、だだっ広い草原のド真ん中に、一軒の宿屋を見つけた。


(こんなところに宿屋……?)


 とてつもなく不自然だった。


 それに、こんなところで経営していて儲かるのだろうか。


 でも、宿屋を目の前に、吹きっさらしの草原で、夜露に濡れながら一夜を過ごすよりは、絶対に泊まった方がいいのは一目瞭然だった。


 僕は、膝にも届かないほどの長さの草がどこまでも広がる草原を、とぼとぼと歩いていった。

 
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