ゆめ(ホワイト)

□とろけて、きえる
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「ふわー!天国だぁ」

ピンポーン、と聞き慣れたセンサーの音と同時に、ジリジリと照り付ける太陽の暑さからようやく解放された俺達は、寒いくらいに冷房の効いた店内をぐるっと見回して、真っ先にインスタント食品の並ぶ棚に向かった。無論、昼飯を選ぶために、だ。

「お前、マジでこんなんでいーの?」

今日は久々に部活がない日曜日で、だからと言ってこの暑い中わざわざどこかに出掛けるのも気が進まなかったから、朝早くから彼女を家に遊びに呼んでいた。(と言っても、俺の部屋でテレビ見たり雑誌読んだり、だらだらしてただけだけど。)時計を見ればいつの間にか昼時になっていて、そろそろ腹減ってきたなー、と何気なく呟くと、じゃあお昼買いにコンビニ行こうか、とニコニコ笑う彼女に提案された。なんつーか、もっとこう、ファミレスとか、正直言うと内心そういうとこに食べに連れていけとか言われるんじゃないかと思っていた俺は、コンビニに昼飯を買いに行く、という自然に言い放たれた彼女の台詞と無邪気な笑顔になんだか拍子抜けしてしまって、言われるがままに家を出て、…今に至る。

「んー、何が?」

棚を覗き込むために腰を屈めたまま、隣に立つ俺を見上げて首を傾げる彼女。

「なに、っつーか…」
「うん?」
「昼、どっかに食べに行きたいとか、ねーの?」

ぶっきらぼうな俺の台詞に、ただただ不思議そうな顔で返事をしている彼女に、珍しく口ごもりながらそう聞くと、当の本人は大きな瞳を丸くして、ますますきょとんとした顔で俺をみつめた。

「孝介、行きたいところあるの?」
「…いや、ないけど」
「ならいいよ!」

わたしこんなラフな格好だし、孝介の家でお昼ご飯楽しそうだし、とニコニコする彼女に、なんだか少しだけ脱力した。平日も休日も関係なく、毎日遅くまで野球に明け暮れる日々。朝練で登校時間も早いし、帰りだって部活があるせいで一緒に帰れない。クラスも違うから、学校以外で彼女に会えることなんて月一ペースで設けられた今日みたいな休日くらいだ。それなのに、こいつは俺に遊びに連れていけだの何だのと、我が儘や不満を何一つ言ってきたことがない。つーか、言われてもそれはそれで困るわけで、それを承知の上で付き合ってるはずなんだから、これが俺達の普通、なんだろうけど…たまに、妙に心配になることがあるのも事実だ。こいつ、いつも我慢してんじゃねーのかなって。

「孝介もラーメンにするの?」
「おう」

適当に棚を眺めているフリをしながら答えると、そっか、わたしはどれにしようかなー、と棚の端から端までをうろうろと歩き回る彼女。どこまでもこいつらしい、そんな呑気な姿を見て、腹ン中をぐるぐるしてた邪念も直ぐに吹き飛んだ。…考えすぎ、か。孝介はどれがいいと思う?なんて真剣な顔で意見を求めてくるこいつは、本当に、俺に不満も何もないんだろーな、と思った。

「…これ、俺のオススメ」
「ほんと?じゃあわたしこれにしようかなぁ」
「こっちも旨いけどな」
「へえ!迷うなぁー」

そんなやりとりを何回か繰り返して、結局は、彼女が散々迷っていたそれを両方買って食べるときに半分ずつにしよう、という結論に至った。

「ついでにアイス買ってこーぜ」
「アイス!うん、うん!いいね!」

存外、俺もこーゆうのはなかなか新鮮で、楽しいもんかもしれないと思った。



とろけて、きえる



(ねえ、こーすけ)
(はあ?)
(アイス食べてたらね、)
(んん、)
(手、繋げなかったね)
(…そーだな)























初挑戦泉くん´ω`
100912



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