駄文
□お酒はハタチになってから。
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「な、今夜どっか食いに行かねぇ?奢るし。」
それはある日の放課後。
雲雀がいつものように検問を張って、少しでも違反している生徒を見つけては、良い鴨を見つけたと言わんばかりににギリギリと締め上げていた時のこと。
珍しく部活が無かった山本が、いつもの爽やかな笑顔を浮かべてやってきて、そう言った。
「…僕が群れんの嫌いって知ってるよね?」
もちろん返ってきた返事はイエスではなく、フイと身を翻してしまう雲雀をさして気にもせず、手を合わせて軽く頭を下げる。
「頼む!!どうしても雲雀と行きたいんだよ。」
いつもあれほど、人前では敬語を使えと言っているのに、まったくこれだから山本武という人間は。
けれど、そんな奴に、どうしても雲雀と行きたいと言われて、嬉しいと思う程毒されているのだから、それこそ手に負えない。
仕方なく雲雀は、検問を草壁に任せて自分は山本と一緒に帰ることにした。
途中、そっと差し出してきた手をひっぱたいて、山本がここだと指を指した先は
居酒屋。
「なんでこんな群れる為にあるような場所こなきゃいけないの?ていうか僕等未成年だよね。風紀乱さないでくれる?」
雲雀の顔が、見る間に曇り、山本をきっと睨む。
居酒屋と言っても、ファミリー居酒屋なので、恐らく雲雀が思い浮かべているであろう雰囲気とはかなり違うのだが、それでもやはり酒というのが許せないらしい。
「まあまぁ、そう言うなよ。雲雀の為にわざわざ個室の予約しといたんだぜ?」
まったく、山本はずるいと思う。
こいつに雲雀の為だとか、こんな顔で言われると、断れないんだ。
わかってんのか、わかってないのか。
多分わかってないんだろうな。
本当に天然はタチが悪い。
仕方なく、脇腹に肘鉄を食らわしてから、入ってやることにした。
入ってすぐ柔らかい物腰なのに、ハキハキした感じの良い女に通されたのは、その一部屋だけ孤立した、本当にちゃんとした個室。
完全に二人だけの部屋で、煩わしい耳障りな雑音にまみれなくすむ、と思うと、少しだけ気分が良くなったから、いつもなら絶対にしないけど、山本の隣に座ってやる。
山本が一瞬驚いてから、顔がニヤけたのがムカついたから、もう一度肘鉄を食らわせておいた。
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