駄文

□独占欲
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雨が、降っていた。


それはすぐ隣に大通りが広がるバーの裏で、表からは想像出来ない程暗く静かだ。

そこで、黙って緊迫した雰囲気の俺と


「…ー-リボーン、」


その一言で、空気が崩れた。


一瞬のことだ。


でも少し、ほんの僅かだけれど俺のが早かったようで、俺の仔猫ちゃんが鉄の塊を吐き出し、リボーンの体内を貫通する。


リボーンは声の一つも上げずに、ただ口の端を少し吊り上げて笑みを浮かべ、崩れ落ちた。


時を遡れば、それはつい数分前のこと。


俺は、アイツと初めて出会ったバーの近くを偶然通り掛かり、無意識に足を止めた。

少なからずリボーンがいることを期待したのは確かだし、その時はまるで待ち合わせをした恋人同士のような気分だった。

ふとそのバーのすぐ横の、小さな路地裏に目をやると、見慣れた黒いスーツが目に入り息を飲む。

人間誰だって、期待していたとはいえそんなに突然に相手が現れたら動揺するだろう。

俺は何も言わずソレに近寄った。

そして明らかに不機嫌そうに眉間に皺を寄せ壁にもたれ掛かるるソレの向かいに、同じように立つ。


「やぁ、リボーン。珍しいな、一人か?いつものブロンド美人は連れてないのかよ。あ、今は純和風の大和撫子だったか?」


そう言って詰め寄ると、冷たい鉄の塊が押し付けられた。

勿論自分とてヒットマンで、こいつの命を狙っている身だ。
同じように銃を構える。


いつもなら鼻で笑われてしまうのような、ヒットマンとしての才能の無さ

けれど、

そんな俺が。

このボンゴレでナンバー1にして、誰もが恐れ羨む一流ヒットマンのこの男よりも、少しだけ早かった。

リボーンは呻き声すら上げなかった。

ただ最後に、その整った顔で、笑う



俺は、やっと念願が叶って本当に嬉しくて。

嬉しくて嬉しくて、涙が出るんだ。

そう、これは嬉しくて泣いてるだけ。

涙はいつまで経っても止まらないけれど、これは嬉しいからなんだ。

心が錆び付いたように苦しいのは、きっとこの雨のせい。


「…リボーン‥」


本当は、

いつからだったか。

好きだったんだ。

最初は本当に、ただのターゲットとして殺したかった。

でも、いつからかアンタのことばかり追うようになって、アンタのことしか考えられなくて。

それなのにアンタは何人もの愛人を抱えていたし、俺なんて星の数程いる中の一人でしかないと気付いたんだ。

だから、やっぱりアンタを殺そうと思った。

アンタの最後の顔を見るのも、アンタを殺した奴も俺一人なんだ。

星の数程いる愛人や部下や殺し屋、そんなアンタに関係する人間の中でたった一人だけ。


「我慢…」


だから悲しくなんかないんだ。





…ない、筈なんだ。




++++++++++++++++++




愛してました

愛してました

貴方のことを、本当に本当に愛してました


だから今は少しだけ、

この雨に任せて泣くことを許して下さい。



end
 

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