100題

□005.嗚呼、青春
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(うん、やっぱり)

空は青いわけで。



「ね、青春だと思わない?」

ふ、と風が二人の間を滑る。
まだ湿り気を帯びていないそれはしかし爽やかと言うには心なしか頼りなかった。

「…どの辺が」

悠太の声がそんな小さな風に乗る。
ふわり。

「今のこういう、雰囲気」

ちらりとこちらを見た悠太は、またすぐに空を見上げて、沈黙した。


そこにあるのは青い空と、柔らかな風と。


「そうだね」


優しい君。


…なーんて。



(くさ…)






「…ゆーたさん」

「ん?」

「顔、近くないですか」



君の香りが鼻を擽る。



「もっと青春、しようか」
「なにそれ」
「笑わないの」
「はーい」




目を瞑っても、そこは真っ暗なんかじゃない。
青い空と、柔らかな風と、優しい君を感じる。


(甘い…)



「チョコの味がするよ」
「さっき食べたから」
「あまい」
「青春の味じゃない?」



違うよ。
青春はもっと甘酸っぱいんだから。



「次はレモン味がいいな」


『嗚呼、青春』




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09.5.31 漆島希有



















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