100題

□036.見かけたあのこ
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オレは知っていた。
学校帰りに必ず通るファーストフード、窓際テーブル席、そこにはいつも同じ少年が座っていることを。

自分と同じ学生服を着ているから、たぶん同じ学校。
けどそれ以外のことはなにひとつ知らなかった。
名前はもとより、学年、クラス、所属クラブ… 誰かに聞こうにも、自分の周囲の誰一人としてその店の窓際に座る存在を認識していなかったのである。

(まさか幽霊とかじゃないよな)

意識してみれば、たしかにその男子生徒が誰かと話しているところを見たことはないし、学内で見かけることもなかった。
いつもの場所で見かけるときも、何をするでもなく、ただなにかのドリンクを飲んでいるだけ。

(オレ見えちゃってたらどうしよう)


いやいや…やめてくださいよ、オレそういうオカルト系ほんとダメなんで。

気味の悪い考えを振り払おうと首を2、3揺らして、近づいてくるファーストフード店の店内に目を凝らした。


ああ、今日もいました。ちゃんといましたよ。

制服の上着をきっちり閉め、いつもの席でストローを銜えるその姿はやはりどこか現実味が欠けている。
一段と強い興味が湧いた。
今この瞬間に湧いたわけではなく、思い返せば初めて見かけたその時から気にはなっていたわけで。
それでも近づいてみようなんて…話してみようなんて思ったのは今日がはじめてだ。

どうかしてる。
ほんとに幽霊だったらどうすんだ。

そうは思いつつも、一度進みだした足はもう止まらなかった。



来店を歓迎する店員の声を聴き流して、窓際に座る空色の髪を視界に捉える。


「なあ」

知り合いでもないし、名前なんてわからなかったからそれ以外言いようがなかったのは確かだが、なんか、うん、素っ気ないな。
少年、すまない。


ゆっくりと、振り返る。
髪と同じ色をした瞳が無機質にオレを映した。


「はい、なんでしょう」

「…え、あ、えと…」






「なに飲んでんだ?」







アホか、オレは。





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13.4.20 漆島







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