ふっかつ
□To you.
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「もういいよ帰って。」
「は?何言って…」
「帰れって言ってるんだけど。」
ったく、何だってんだ。
どうやら今日の委員長様はご機嫌ななめらしい。
いつもの如く応接室に呼び出された俺は恭弥に紅茶を入れた途端、不意に部屋から追い出されてしまった。
(なんだよ、あの顔)
不貞腐れたような横顔がチラつく。理由なんか知らないし、わからない。俺が何かしたわけでもない…と思う。
一人屋上の柵にもたれながら考える。
(俺もしや自分でも気がつかないうちに何かしたのか…?)
いや、だとしたらピクリとも動かなかったトンファーの説明がつかない。気に障ることをしようものなら2,3発は飛んでくるはずだ。
(どうしちゃったんだ)
いつもは一言余計なくらいなのに肝心なところで何も言わないのはいつになっても変わらない。
空を見るのに飽きて下に広がる町並みに視線を落としたときだった。
「…あ。」
ふと目に付いたのは住宅のベランダに揺れる鯉のぼり。
(今日、5月5日…)
色鮮やかな鯉の尾が風になびいた。
「……ガキ」
呟いて、俺はポケットで眠る携帯へと手を伸ばした。
To:雲雀恭弥
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Sub:遅くなったけど
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誕生日おめでとう。
From:雲雀恭弥
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Sub:Re:遅くなったけど
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それだけ?ケーキくらい買ってよ
「ガキに食わすケーキなんか無ぇよ。」
帰ったら鯉のぼりでも飾ろうか。
『To you.』
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07.8.11(5.5) 暁希有