ふっかつ

□地球滅亡の日まで
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その日、まだ昼間だというのに空は一面怪しい雲に覆われていた。日の光は当然無く、雲の明暗は渦を巻くようだ。
雨が窓を叩く。嫌でも耳につくその音は憂鬱な気分にさせるには十分だった。


「・・・・・・雨、凄いですね。」

書類から目を離した俺は、ソファで寛ぐ雲雀さんに声をかけた。



既に校舎には人の気配が無かった。

風紀委員はとにかく仕事が多い。そしてその多量の仕事は毎日毎日、尽きることを知らない。
その事実は風紀委員会が学校一大変な委員会であると言われる所以の1つでもある。
もっとも、その所以の大部分を占めるのは今目の前で自分を睨みつけている我らがリーダー、雲雀恭弥の存在であろが。
この人物はもはや恐怖の対象である。


「君、それ何回目だと思ってるの。」

雲雀さんの鋭い眼光が突き刺さる。
痛い痛い。そんなに睨まないでくださいよ。

実際、先程の発言はゆうに三度目を超えていたのだから、そう言い返されても致し方ないのだが。


「だって雲雀さんが何も言ってくれないから・・・」

不貞腐れたように言うと、少し間をおいて溜息だけが返ってきた。
そりゃまぁ、相手にされないことくらいわかってはいましたけどね。









再び沈黙が訪れる。

雨音が少しだけ強くなっていた。










ふと、口から言葉が零れ落ちた。


「なんだか、寂しくなりません?」



こうも雨が強いと。





言ってから、ちょっとだけ後悔した、かも。

正当な理由は用意していなかったから。



「・・・・・何故?」

雲雀さん・・・・・わかってはいたけどそんなキッパリ聞き返さないでくださいよ。

「だってなんか・・・・・」


だってさ、ほら

はっきりコレっていう理由はないんだけどね、
なんていうかこう・・・今まで生きてきた世の中とは無縁の、外の世界?っていうのに、不意に放り出されるような、そんな妙な感じになるんだ。

暗い、暗い、別の世界に。
雫の流れに逆らうことなく、流れていってしまうような・・・




激しい雨音に自分の存在すら掻き消されてしまいそうだ。







「この世の終わりだ―――・・・・」

「意味がわからないんだけど。」



俺搾り出した言葉は雲雀さんに一蹴されて冷たい床に転がった。
コロコロコロ・・・
そのまま静寂の渦へと巻き込まれていく。




ああ、なんかもう・・・・


「地球が滅亡するみたい。」




雨は窓を叩く手を緩めない。



「今日が地球滅亡の日だとでも言いたいの、君は。」


きっとこの人は地球を滅亡させる側なんだろうな。

「例えですけどね。」

僕はもちろん、滅亡させられる側にしかなりえない。
そう。
きっとそうだ。






だから・・・・



「・・・・・・多分、雲雀さんがその気にならない限り、滅亡の危機はないと思いますよ。」








「・・・・それどういう意味?」

「嘘です。冗談です。ていうか何でもないです。」

やだな、あはは。

笑って言っても誤魔化されてくれないだろうけど。









書類に目を戻したのとほぼ同時に、雲雀さんが微かに笑った気配がした。






雲雀さんが笑ってる。

大丈夫、地球滅亡なんて訪れやしないさ。







雨音はほんの少しだけ弱くなったみたいだ。











    『地球滅亡の日まで』
                                 一緒にいられたら、なんて



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07.1.2 暁希有(〜07.8「METEOR」)
07.8.9 暁希有(「140糎」07.8.9〜)
 

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