ふっかつ

□愚か者だと笑うがいい
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そうさ。

愚か者だと笑うがいい。









目の前にいる男を、渾身の力を込めて睨みつけた。予想はしていたがピクリとも動かない。効果がないことなどはじめからわかっていた。けれどそうせずにはいられなかった。否、そうする他に抗う術が無かったのだ。彼の言う「群れる、弱い者」の一人である自分にできることなど限られている。
手には冷たい汗が滲んでいた。






「天下の雲雀恭弥様が、俺に何の用。」










風が素っ気無く吹きつける。草木が揺れた。

自分と彼の間を阻むモノなど、空気以外に何もない。






「君、気に入らないんだけど。」




肉食獣を思わせる鋭い眼光が射抜く。

こっちの眼なんか通り越して、神経も侵され、頭の隅々までぐちゃぐちゃにされるような、そんな変な感覚に捕われた。


この男には敵わない。敵うはずがない。





握り締めていた手は今はもうすべてを諦めたように力なく垂れ下がっていた。足ももはや己を支えるだけのもの。
唯一瞳だけは、先程と変わらず男を睨み続けている。


まるで凍りついたかのように。

眼が、離せない。









整った唇がゆっくりと弧を描く。


「咬み殺してあげる。」


同意するように、促すように、再度吹き抜けた風が黒を揺らす。





ああ、なんて綺麗なんだろう。





これほど綺麗なモノに愛でられるのならばと一瞬でも夢を抱いた自分は、愚かなのだろうか。











何かが、きらりと輝いた。









  『愚か者だと笑うがいい』
                               それもすべて、束の間の夢


**
06.11.5 暁希有(〜07.8「METEOR」)
07.8.9 暁希有(「140糎」07.8.9〜)
 

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