ほかのゆめ

□おめでと
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指名手配中だというのに、俺とスギは相変わらず江戸の町をブラブラ歩き回っていた。
昼間だからか、やはり人通りは多い。
いつか捕まるんじゃないか、と思わなくもないが、それでも俺達は歩みを止めることはなかった。

あれ、今日は何日だっけか。

何もしていない日々が続くと、どうも日付を忘れがちである。何も自分の記憶力が悪い所為ではない。・・・・多分。

俺はどうにか今日の日付を思い出そうと、頭を捻った。



ああ、そうだ。思い出した。

今日は・・・・・


俺は橋の途中で足を止めた。俺のすぐ後ろを歩いていたどっかのオヤジが迷惑そうに追い越して行った。

前を歩いていたスギは少し遅れて、振り返る。

「どうした。」

置いてくぞ。
目がそう言っている。

待ってよ。今大事なこと思い出したんだからさ。

人が、どんどん俺達を抜かして行く。
なんだか俺達の周りだけ時間が止まったような、そんな錯覚に陥る。


「思い出した。」

少し間をあけて、ポツリと相手に届くか届かないかの声で、呟いた。


「何を。」

「俺にとって大事なこと。」

スギが眉を寄せる。
「何だコイツ。」そんなカンジ。

まあ、ちょっとこれだけ言わせてよ。

思わず口元が緩む。

笠を被っているにも関わらず、日差しは暑かった。

風が、熱をもった肌を撫ぜて、心地良い。







「スギ。誕生日おめでと。」







「阿呆か。」

スギは俺に背を向けて、ぶっきらぼうにそう言った。

俺は歩き出した背中を追いかける。



時間はまた、流れた。




  『おめでと。』



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06.8.10 暁希有(〜07.8「METEOR」)
07.8.13 暁希有(「140糎」07.8.9〜)

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