novel

□ココロ
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ひどい雨。

こんな日は、とびっきりの奇跡か
もしくはとんでもない悲劇・・・
起こるのはいずれかなんだ。

コンコンとドアをたたく音がする。
「おーい、入るぞー。」

聞きなれた軽い声。
あたしは断る理由もなく許可を出す。

「入りなよ。」

「すんげえ雨だなぁ。雷が落ちたりして♪」
ニヤニヤと笑うゼロス。
そう、あたしの弱味をコイツは握っている。
「・・・ウルサイ」


「まだ苦手なんだ〜?」
悪巧みをしている嫌な笑顔。
「『きゃ〜ゼロス〜助けて〜』なんて♪」
あたり。
「ならない!!」

「ふ〜ん」
そしてすねる。
その時だった、あたしはすっかり油断
していた。
かなり近いのだろう。ドンと大きな音と
共に雷がおちた。

「きゃああっ!!」
驚いたあたしはとっさに
ゼロスに抱きついた。
「ぉっ・・・おお??」
ゼロスも驚いたのだろう。
少し混乱して声が裏返っている。

あたしは焦ってゼロスを
突き放した。

しかし、ゼロスはあたしの手首を
掴んでひきもどした。
「なっ・・・!?」
突然のコトに戸惑いが隠せない。

「・・・いいんじゃねえの?」

「ぇ・・・?」
何か言ったようだけど、ゼロスの声は
小さくて聞こえなかった。

「隠さなくていい」
再び彼の口から放たれたコトバは
暖かく、彼の表情は意外にも真剣だった。
「どういう意味だい・・・」
アタシもつくづく意地悪だ。
試しているような問いかけ。

「怖かったんだろ。しゃあねえよ。
だから、我慢する必要なんかない。」
冷たいココロに触れた暖かいコトバは
浸み込んで、硬い何かを溶かすようだった。

「・・・本当に?」
「ん!?おっ おう!むしろこのままのほうがいいっていうか〜♪」
ほら、いつもの照れ隠し。

しばらくこのままでいてやろう。
アタシは知ってる。アンタが照れてるの。
困ってるの。
だから意地悪してやろう。

ひどい雨の日。
大きな雷に驚かされた。
けれどキミの暖かさを知った。

とんでもない悲劇と
とびっきりの奇跡
同時に起きたよ。

神様なんてうそつきだから
アタシが信じるのはこのココロ

あなたの言葉に揺れる
間違いなど何一つない

このココロ。

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