泣いてもいいよ、

□Step.01 Daily Life
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「みーーおちゃん!」

ドスン、と布団の上から何かがかぶさってきて、少し気の遣われた重みを感じる。

朝、6:30。

ここ1ヶ月…2ヶ月くらいいつものことで。

「綿貫さん!避けてください!」

私の上に容赦なくのる、綿貫さんの日課にもなっている。

「やだ、襲っちゃう」

「ん〜っ!っりゃッ!」

ボブっと音をたてて、布団もろとも綿貫さんを落とす。最近は力がついたのか、楽々な気がしないでもない。(余計な筋肉ついたかなあ?)

「、うっわー、暴力反対!」

「私は夜這い反対!」

尻餅をついたその状態で、綺麗に染められた赤茶の髪を掻き上げて、ニ、三個両耳についている、キラキラとシルバーのピアスを光らせる。
その風貌からわかるようにこの人は、まともな会社勤めの大人ではない。
だからこそ、この人の仕事がある、ともいえる。


「バカ皐、さっさと寝ろ。美央ちゃん、おはよ」

「あ!おはよございます、杠さん」

「っぜー!光也!どっかいけー」

部屋のドアからひょっこり顔を出したのは黒いスーツをピシッと着こなした、杠さん。
いかにも紳士。真面目な社員ですって感じではあるけど、残念ながら社員じゃなくて、社長さん。

そして朝、私を呼びにくるのを日課にしてる人。

「綿貫さん、あっちいっててくださいよ」

追い出して、制服をきて、洗面所で用を済ます。

「あ、おはよう美央ちゃん」

「おはよございます、天春さん」
4人分の椅子がある食卓テーブルに座ると、天春さんが朝食を運んでくれた。

「美味し!」

「ほんとう?」

「蜂蜜ですか、コレ?」

「光也、鋭いねー」

日々進化する料理は、毎朝の楽しみでもある。

「美央ちゃん、10分前」

「うそっ!」

ドタドタへや部屋を行き来して、
「いってきます!」

「いってらっしゃい!」

最後に、私に時間を教えてくれるのがこの人の日課。



あれ以来……私には家族ができた。
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