泣いてもいいよ、
□Step.01 Daily Life
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受話器を取った途端、私の耳に届いたのは訃報、そして雑音。
頭の中を支配する雑念を一掃した知らせは、果てしなく続く奈落の底へと私を突き落とした。
赤い、翼を広げていた鳥のようだという姿は、もう居ないのだということを告げていたという。花を咲かせたように美しかった、というのは、後から聞こえてしまった誰かの話。
見ていたわけでもなく、よくテレビドラマなんかである予感というものもなかった。いつも通り、だと信じていた。当たり前のことだと、思って、当然であるかのようにふたり分のシチューを作って。
ほんとうに?
雑念が終わって、無音。
しばらくあってから私は声を出した。震えてはいたけど、涙は流れてなかった。
相手は頷くのが躊躇われたのか、答えまで時間があき、その間に私は力なく受話器を置いた。
動けなくなって、立ち尽くして。1分、2分、…5分、10分…。時間が経って、30分後くらいに隣のりっくんがきた。
美央ちゃん?
名前を呼ばれて、振り向くと、目を赤く腫らしたりっくん。綺麗な涙。りっくんは、哀しそうだった。
美央ちゃん、逢いにいこう?
手を引かれても、動けなくなっていて。
何かが壊れる音がした。