帽子屋さんの恋

□序章
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パチリ、と目を醒ましてぐるりと眼球を動かして辺りを見渡す。

上も下も、前も後ろも
右も左も、
綺麗に塗り潰されたように真っ黒だ。
見える一面が漆黒でおわれていて、こうやって私が立っているとわかるのは、■■■自身、もしくはこの立っている位置が光っているからか。


―――夢?


にしては意識がはっきりしていて、暖かくも寒くもない空調を感じ、また地に足が着いている感覚もある。


ならば現実か、と言われれば見たことないこんな真っ暗闇、漆黒の背景、光の一切射さない空、見たことなく、どうやってこんなところ「……ッ!」

――痛い。

どうやって?

思い出したいのに、頭がキーンとして痛い。思い出せない、わからない。

どうやって来たのか。
どうして■■■がここにいるのか。
ここはなんなのか。

たくさん、あるのに、わからない。思い出せない、知っているはずなのに。知っているはずなのに?

――怖い。恐い。


■■■は、わからない。
なんで、どうして。

とてつもない恐怖が私を襲う。なんともなかった空調が寒くなく気がして、必死に自分で自分を抱き締める。


■■■は、いま
どこにいるのだろう。





 

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