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□だって、約束できない
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見える景色は日々確かに変わっているけれど、心で見る世界は変わらない。強いていえば、次第に絶望をみせられている感じ。考えてみると、最初の頃にみていた大きな光は今はほんの少しだ。いつの間に、と思う。いつの間に、失っていたのだ、と。今更思っても、もう取り戻せない。どこかへ拾い忘れている欠片は後戻りできないところに散らばっているのだから。


「よ!」
「また?」
「宿題ー」
「いらなっ!そんなん持ってくんな」
「いやー、だから手伝ってほしくて」
「嫌だ」
「そこをなんとか!」
「むりむりー、頭わるいもんっ」
「オレよかいいだろ!」
「ハンデが違うし?」
「あーもー!わーった!シュークリーム奢る!」
「何個」
「1…いや2個で」
「……よろしい」
「よかった…これ明日までなんだよ」
「は?」
「これじゃ絶対おわんねーと思ってたし」
「いつまでこの量をほったらかしにしてたんだよっ!」
「………さぁ」
「―――――。」

「ほ、ほら!…やるぞ!」
「はいはい」

光は小さい。視野の狭いところで、これかも生きていく。考えるだけでぞっとする。いつか見えなくなるんだ、この目の前の山のような宿題も、窓の外に広がる景色も、私を包み込む白い部屋も、コイツの顔も。どうして自分なのか、なんで自分じゃなきゃいけなかったのか。運命を呪った。神様なんていないと知ってこの先の未来を拒んだ。けど着実に近づいてくる。夢とか希望とか、そんな問題以前にそれらとは逆のものを背負って、他人との違いを、紛れもなく存在するその差を恨んだ。変わらないのに。変わらないことを知っていてもそうしないと壊れそうだった。だって。だってね。

「……おわったー」
「終わったねー、ほら帰れ」
「はぁ?せっかくきたのになんだよ」
「きたっていうか、宿題の助っ人探してただけでしょ」
「そ、れもあるけど……」
「もう遅いし、ほら帰った帰った!」
「はぁぁ、わかった。また明日くる」
「こなくていい」
「おい、それ彼氏にいう台詞か…」
「うん」
「ひどっ。…まぁ、とりあえず。明日も居ろよ、約束な」
「………」
「返事しろよ、バカ。またあした」

輝いているのを見ると、ほしくなるじゃない。自分が持っていないものを望むのって、普通のことでしょ。輝きたいって思って、色々考え、やってきた。でもいつか知った。絶対に手に入れられない存在のこと。


「約束ね、……約束。」

いつも気を遣ってか、それとも無意識か。彼は毎日約束を置いてゆく。契り忘れた約束を。私の明日への希望。そして、今は絶望。
片想いの約束が、今日は目の前で散ってゆく。


「バイバイ、さようなら」


代わりに置いておくよ。


だって、守れないから

(明日を知るのが怖かった)
(もう大丈夫。)
(この約束は、守れなくとも)
(天国まで有効にして、)









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