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□私たちは誰よりも体温を知っている
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西暦 20XX年

日本は変わった。


被爆国(もう唯一、ではなくなっていたが)であったために、核の放棄、平和主義のもと、政府は動き、人々も大半がそれを支持し何気ない日常を送っていた。
科学は進化し、便利さや効率性は数段増し、街は都市化・機械化を遂げた。よって、生活風貌は徐々に変わっていったがそれでもいい面も悪い面もほぼ変わらずして人々は暮らし、生きてきた。

但し、それは一部を除いて、だが。

一部の、いつの間にか暇を持て余し、刺激を求めた戦時を知らない人々、そしてそれの裏で同時にぐんぐんと勢力を伸ばしていた日本再生を唱えるある政党。

偶然にも出会ってしまった。


いつのまにか絶大な人気を誇る党首に、ねずみ算的に増える(実際にはありえない)支持者。


そしてその政党は『戦後から日本を作り直す』ことを掲げ、次々と法律を変えていった。


―――それは富国強兵宣言だったのである。


しかしそれを知るものは少なく、皆頭が冷静に働いていない。洗脳、ではないが、その党首――総理大臣の言葉に巧みに操られ振り回されていることに気付いていないのだ。


気付いた少数は自分たちなりに対抗をしようと様々な活動をしたが、少数の運命というのは決まり切ったようなもので、阻害され、虐げられ、少数意見の尊重なんてその文字もなかった。
それでも対抗をやめなかった者は政府からの警告をうけ、暫くしてから捕まえられているらしい。(らしい、というのは都市伝説の絡みで外国に売り飛ばされた、殺された、洗脳された、など証拠のない話がたくさん散らばっているから)

そうやって数人ずつ邪魔者を排除するうちに、高見の見物の大人たちはギャンブルをはじめたのだ。


それが、今の私たちを作っている状況である。



―――邪魔者に懸賞金をかけて、捕まえよう。


唐突に懸賞金をかけられ、告知され、報道され、追い掛け回される。嘘の理由で数人の人々は人生を壊され、そして失くした。そして何故か今も尚、私たちの命は日本中に売られ、晒され、弄ばれている。


実質上、日本全人口 VS 3人



絶望的な未来が広がった瞬間である。





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