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□おそすぎないうちに、
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失ってから気付く、というのはこういうことだ。
改めてそう、痛いほど感じる。いつもそうだった、そしていつも後悔して、次はそんなことがないように、と思う。思って、実行しようとして、出来なくて失う。失ってからは後の祭りでしかない。何も出来ず、ただぼーと後悔の念をひたすら抱くのだ。
『好き』だと言えず、
『ありがとう』の一言も、言ってあげられなかった。
溢れるほど、此処にはその気持ちがあるのに。泣きたいほど、此処にはたくさんの想いがあるのに。
失ってから、その大切さがわかって。悲しくて。辛くて。届かないのがわかっていてもあがいて藻掻いて。ああ、やっぱりって余計傷つく。さっき、此処にあったのは奇跡なんだ、って。
もう。だから、怖いとか恥ずかしいとかそういう問題じゃないって思った。今まで何も出来ず、何も言えぬまま失ってきたものは多い。これ以上、増やしてはいけない。君を失ってはいけない。
君が、いままでのものたちが、身近だからこそ、気付けなかったっていうのは大きかった。身近にいて、当たり前で、なんとなくそこに居た、普通だと思ってた。でも違った。身近だから、掛け替えのなくて、大事で、代わりなんかどこにもなくて。
目の前の君が去りゆく。
間に合ううちに。
遅すぎないうちに。
ずっと待っててなんて、図々しいことは言えない。
だからね。
いま出来る限りのことをする、精一杯。
それで君を失わずに済むのなら。
おそすぎないうちに、
やっと唇から零れた言葉は君に届きましたか?
どうか。どうか。
この想いが伝わりますように、
そして―――。
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