サンイヴェサン/SH





自分は今まで普通の人間だと思ってた
いや、別に超能力が使えるようになったとかそういうのではないんだけど

なんて言うのかな、
"見えるようになった"ってやつ?

家に帰ったら人じゃない何かが我が家でのリビングで我が物顔でくつろいでたんだよね
よくシエルが貸してくれる漫画みたいな
つかシエルの持ってる漫画ってだいたいオカルト要素入ってるんだよな…
あいつ大丈夫なのか?


まぁそれは置いといて
"家に訳有りの幽霊がいてそいつが浮かばれるまで一緒に生活する"
みたいな展開だったら俺はすんなり受け入れてたかもしれない

でもさ、玄関開けたら3人も(後から判明したんだけど本当は8人)も人外の存在がいた日には
"あぁ、俺こんな幻覚が見えるほどに受験勉強の疲れが溜まってんだな"
って思っていいよね


「ねぇメルメルー、そこのクッキーとってー」
「これか?」
「それそれ、メルシー!」
「アー…マタジョーカー引イタワ」
「エリーゼってジョーカーに好かれてるのね(笑)」
「私ハジョーカー引カナィノニ全ク揃ヮナィノハナンデ…?」
「多分それはΦの引きが悪いのよ(笑)私とヴィオは普通なのにねw」
「冥王様、ドウシテモ此処カラ進メナィ…」
「此処ノステージハ我デモコッヲッカムノニ2日カカッタョ、チョット貸シテゴラン」



これが日常になっちゃってる辺り、もう終わってるよな

しかもさ
このフランス人、天秤とか名乗ったけど超イヴェールにそっくりなんですよ
おかげで必要ないときにドキドキしちゃう俺とか超純粋、きゃー
だってあいつはこんなに素直じゃないし寄ってこないぞ
これがもし、"貴方の想い人の姿を借りて住み着いてました本当は醜い化け物です"とかだったら全力で殴るけどな
でもこいつの馬鹿さと純粋さを見れば嘘じゃないってわかる
なんでも冬に抱かれて生まれなかった存在らしいが何故ここにいるのかは不明、つーか俺ってばサラッとイヴェール好きって言っちゃったよおい
…それもこれも天秤のせいにしておく
あと生まれてないけど冬生まれだからってこのクソ暑い中もこもこのコートを着てる、アイツどっかおかしい

そしてメルメルとか呼ばれてる奴、本名はメルヒェン・ボンなんたららしいが長いのでしっかり覚えてない
こいつは非常に不健康そうな色をしている
目の周りとかパンダみたいな熊が出来てるし、本人曰く睡眠はしっかり取っているらしいがそうなるとこれは皮膚病なんじゃないかと思う
人外なので知ったことではないが。
まぁ容姿は若干天秤と似ていて、言うなれば光と闇。この場合、天秤が光でメルヒェンが闇だ

んで、このでっかいの。冥王様らしいんだがどうも胡散臭い
しかし前に疑ってかかって家の中の害虫を全て葬り去られたから本当だと思われる
あの時は死骸の片付けるのが大変だった…
あとマヨネーズの消費量が半端ない、俺の食費が…


他の奴、みんな女なんだがそいつらはそれぞれについてる存在らしい
天秤にはオルタンスとヴィオレッタ、メルにはエリーゼ、冥王にはμとΦ
ぶっちゃけよくわかんねぇしどうでもいいんだけど。


つー感じの家に俺は帰宅した。










「お前らさ、一応家主が帰ってきたんだから出迎えろよ…」

「……。デネ、ココヲコゥスレバ…」

「え、無視なの、俺のガラスの心傷ついちゃったんだけど、泣いちゃうんだけど」
「お帰りローランサン!!」
「Σわっ!なんだよ天秤、急に現れるな、びっくりするじゃねえか!そんで抱きつくなっ」
「え〜、だってサンが寂しそうにしてるから〜」


寂しいのは確かだけど天秤に抱きつかれるとちょっとばっかし妙な感じがするんだよ…!//


「…まぁいいや、お前ら全員奥の部屋に隠れてて」

「ェー、我今ィィトコロナノニ…!」
「いや知らねぇし」
「…私は構わないが、何故隠れなければならない」
「…友達が来る」
「別ニイイジャナイ、"シエル"ッテ子ニハ知ラレテルンダカラ、キャハハハハ」

黙れ高笑い人形。
いやいや、シエルがお前たちを知ってるのはお前らが勝手に出てきたからだろ
それにシエルじゃなかったら今頃言いふらされて俺はご近所さんから疎遠されてるところだ
もしかしたら引越しも考えないといけないところだったんだぞ

「今日来るのはシエルじゃないの、つか天秤そろそろ離れなさい」
「誰ぇ?」
「…イヴェール」
「誰それ?」
「前に言ったお前にそっくりな奴」
「え、ホント!?僕にそっくりな人来るの?見たいみたい!」
「だーめ、大人しく奥に居なさい」
「えーやだー!」
「じゃあもうお菓子買って来てやんねーからな」
「奥に居ます!」
「よしいい子だ、その勢いで俺から離れなさい」


離れなさいって素直に聞く奴じゃないからな天秤は、スキンシップが趣味なんだとか。なんじゃそのセクハラ紛いな趣味は
…とにかく、無理やり剥がすしかない

あー、イヴェール外で待たせてんだよなぁ…
ちょっと片付けるからって言ってもう5分以上は経ってるな

あいつのことだから痺れを切らして「遅せぇよ、入んぞローランサン」とか言ってこっちの事情お構いなしにずかずか入ってくるんだろうな

玄関の開く音がしてるよ

「サンー、入んぞー?」

ほら入ってきた…入って…



「うわああああぁああああああああ!!」


ちょ、やばいってこれはやばいってとくに天秤が腰に巻きついてるこの状態は!!

「んだようるせえなぁ、外暑いんだよ。え何、もしかしてそんなに見られたくないくらいのえろい本でも置いてんのか、よ…」
「…ぼ、ボンジュール」
「「……」」

あー、なんかいろいろ終わった
天秤は戸惑いながら挨拶してるし
他の奴らはこちらの様子を伺ってる

一方イヴェールは…
一言で表現するとイースター島にある石像みたいな顔だ…
俺んちの異様な光景が理解できないご様子

これはもう流石に説明しないとやばいよな
その前にとりあえず腰についてる天秤どうにかしないと…

どうしよう俺イヴェールに嫌われちゃうのかな
だって友達ん家行ったら自分にそくっりで真夏にコート着てる奴が友達の腰に纏わりついてるんだぜ
嫌われるってよりは距離をとられて彼はただの同級生ですみたいになるのかもしれない
それがいちばんつらい
あ、想像したらちょっと涙出てきたかも







俺の中でひっそり積み上げてたジェンガが、音を立てて崩れた









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