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バレンタインはサバイバル
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ホグワーツ中が甘〜い香りに包まれ、城内はバレンタインムード一色である。

そしてタイミングを計ったかのように3校対抗試合のためにダームストラングとボーバトン校がホグワーツにやって来ているのだった。



つまり、ブルガリアのスター、ビクトール・クラムも同じ城の中にいるのだった。


キューリーは城の中でダームストラング校の生徒とすれ違うたびに、ポッと火がついたように真っ赤になった。

ハジメがキューリーの様子を見て

ハジメ「キューリーちゃん、クラムあの中にいなかったのに…。すごく真っ赤だよ?」

とからかうように笑うのだった。



キューリー「だ、だって!あのダームストラング校ですよ!!ビクトール・クラムですよ!!ハジメさんは緊張しないのですか?」

キューリーは興奮しながらハジメにまくし立てた。が、ハジメは顔色一つ変えずに「全然っ!」と答えた。

キューリー「そうですよね、ハジメさんがこんなことに緊張するはずがありませんよね。聞いたわたしがバカでした。」

しょんぼりするするキューリーに

ウサギ「キューリーちゃんっ!」

ウサギが慌ててキューリーを呼んだ。

ウサギ「ク、クラムが!」

キューリーは一瞬ポケっとして

キューリー「クラム・・・?」

キューリー「はっ!ビクトール・クラム!!」

大慌てで後ろを振り向くと、ビクトール・クラムがやってきた。

筋肉隆々の逞しい肉体。鍛え抜かれたそのボディはまさにプロクディッチ選手である。

周囲から湧き上がる黄色い歓声など気にも留めず颯爽と歩いて行く。

キューリーは口を僅かに開き、大きく目を見開いたままクラムの姿を目で追った。





「クラムー!こっち向いて〜!」

「クラム!あなたのこと愛してるわ〜!」



ホグワーツ中の女子がクラムに愛の言葉を叫んでいる。



あの憧れのビクトール・クラムが今キューリーの前を通り過ぎようとしている。

ハジメ「キューリーちゃん、クラムが行ってしまうよ。キューリーちゃんも何か言わなくていいの?」

ハジメがキューリーを応援し背中を押してくれる。

キューリーは女子生徒たちのように何かクラムに言わなくては!と思うのだが緊張のあまりうまく息が出来ず

キューリー「ク、クラム・・・」

と答えるので精一杯だった。

ハジメ「く、苦しい?!」

ハジメが驚いてキューリーを見る。

ウサギ「違いますよ、クラムって言ったんです」

ウサギが突っ込む。

ハジメ「ああ、そうか。クラムね!」

名前を呼ぶだけで精一杯だったキューリー。

クラムは廊下の奥へと消えていった。

キューリーはクラムの姿が見えなくなった後も廊下の奥をずっと見つめたままだった。

ウサギ「キューリーちゃんよほどの衝撃だったのでしょうね。フリーズしちゃってる。」

その様子を見て

ハジメ「パソコンだったらそろそろ強制終了をかけて再起動させたい頃ですな」

二人の会話はキューリーの耳には届かず・・・・


ようやく「はぁ」と息を吐き動き出したキューリー。

キューリー「本物のクラムに会っちゃいました。わたし・・・私もう駄目かと思いました」

ハジメが眉間にしわを寄せて

ハジメ「へっ?何が?!」

と尋ねる。

キューリー「クラムのかっこよさに頭がクラクラして・・・息ができなくて・・・立っているのがやっとでした」

キューリーは颯爽と歩いていく行くクラムの姿を思い出して今更赤面しはにかみながらうふふと笑った。

ハジメ「ウサギさん、キューリーちゃん大丈夫ですかね?チョコレートの出来栄えもですが、このテンションおかしいですよ」

キューリーはそれ以来突然ニヤリと微笑んだり、悩ましげにため息を吐いたり、ダームストラング校の生徒とすれ違う度に息が止まったりと大忙しである。


ウサギ「キューリーちゃんはすっかり恋する乙女だね」

キューリー「恋する乙女だなんて・・・うふふ」

照れ笑いをするキューリーを見ながら

ハジメ「こんなに浮かれたキューリーちゃんを見るのも珍しいですな」

ウサギ「Go!Go!キューリー!」

と煽るウサギ。

その日、3人は笑の絶えない食事を楽しんだ。
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