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メルト;Melt Prof.Severus Va'
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貴方の為、だけに
想いを溶かして
心 を込めて 作るの
茶色、をした
良い馨り、のする
あまい あまい、お菓子
其れは




「Missイチハナ。寮監である我輩の講義(じゅぎょう)で惰眠を貪るとは、」


そなた、中々に良い度胸、をしている様だな


聞き慣れた低く澄んだ声、で名前を呼ばれて気が付く、と
此処は魔法薬学講義真っ最中の地下牢教室の一角に位置する机、だった。
顔を上げる、と其処には

背が高く細身で
黒尽くめの男性、こと
偏屈地下牢の城主様、通称引見厭味贔屓教師
我が蛇寮監魔法薬学担当セブルス・スネイプ教授(せんせい)が

端整な顔、に
口角(くちかど)を美しく歪め
服装の通り真黒(まくろ)い凄み、を
利かせながら不敵に笑む姿

事の為り行き、を
本日快晴、の蒼穹の空
よりも青い顔、
で見つめる同級生 の
スリザリン、蛇寮生
はじめ
合同授業、の相手
グリフィンドール、獅子寮生
の姿 が見えた。

ホグワーツ、で私の郷里 で
バレンタイン、に行われる
在る風習、の噂が流れはじめたのは
つい最近、になってから。



女性は「在るお菓子」と共に男性に想いを伝える



私 にとっての其のお菓子、は
ある"特別な人"を連想させるもの 
でしか無くて。

一見お菓子、等全く興味 が無さそうに
見える方、だけれど 
或る日 私が見たのは


自室、で良い馨りのする紅茶、を飲みながら
其のお菓子、を普段は欠片も見た事 が無い
穏やかな顔、で口に運ぶ 姿


其れ、を見てしまってからは
少しでも其のお菓子、に
自分の想い、を込めたくて。

連日厨房にて必死に思考して奮闘の結果、が
其の"特別な人"との時間、の此の失態。

私は俯き

「申し訳ありません、教授(せんせい)・・・」

至極哀切で満たした顔つきと声、で伝う。
其れを聞いた教授、は眉間に寄った深い皺、と共に

「・・・無礼な輩、が居る為スリザリン蛇寮5点減点、」

云いながらちいさな溜息ひとつ尽き、講義を再開した。
其れを見、続ける筈だった


でも、余りにも疲れていて・・・講義処、で無くて


と暴言、以外の何者でもないであろうと推測される言の葉
は幸いにも日の目を見る事無く脳内で昇華、され
私は再び眠り、に堕ちていった




「一度、ならまだしも二度迄とは・・・其の不届き千万な態度、に対し更に5点減点、そして」


講義終了後、そなたは残り給え Missイチハナ


の言葉と共に二度寝、を程無く発見され
罰則、として仰せ付かった
薬草保管瓶の山、にラベルを片端から貼る私、に

「・・・何処か体調でも悪いのかね」

微かに優しさの混じった教授からの声、が掛かる。
如何してですか、作業の手を休める事無く問う私に向かい

「隠しても無駄、だMissイチハナ・・・
此処の処、連日ずっと消灯間近迄厨房、に入り浸っているであろう、」


一体何を、しているのかね


私の薄水墨白淡の瞳、と色は一見同じ、でも
もっと綺麗な夜の帳、の様な漆黒の瞳、で
彫りの深い端整な顔、からじっと見つめる教授、に

「御心配お掛けしてすみません、教授(せんせい)・・・でも、理由をお話するのは、」


もう暫く待って、いただけますか


伝う私、に向かい

「・・・二度と講義であの様な我輩の心、が悼む姿、を」


見せぬの為らば、な


冷たく聞こえる言の葉達、の中に
一瞬だけ見せる 気遣い と云う温もり
其れ、は私に対してだけ、だと
願わずには居られない ひと時

「気をつけますね、教授」

了解、の意を込めた
所謂 良い子の返事、をすると
罰則、と云う
2人だけの甘い時間 は終わり

後ろ髪ひかれながら も
そんな様子、は見せずに教室、を出
今日も私は厨房へ 向かう
貴方(せんせい)へ、の想いを込めた
茶色いあまいお菓子、を作りに



ねぇ、教授(せんせい)
此れ、を渡して
理由と共に
想いを告げたら
罰則、で無くとも
其の 密かに一緒に居る
あまいお菓子達、と一緒に
お傍に置いて 下さいますか?




貴方の為、だけに
想いを溶かして
心 を込めて 作るの
茶色、をした
良い馨り、のする
あまい あまい、お菓子
其れは
End.
 

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